『猿の惑星/キングダム』

 

『猿の惑星』シリーズ最新作。

 

アンディ・サーキス演ずる

シーザーを主人公としたシリーズの

数百年後という続編にあたりますが

数世代を経た結果、シーザーたちの物語は

歪んでしまっており、知らなくても無問題。

むしろ知らないほうが楽しめそう(メンタル的に)。

 

一番最初の作品に寄せた「王国」の地形デザインや

エイプたちを含め生き物のCG、

人間文明が滅んだ先の世界観などは

見ごたえがあったのではないでしょうか?

 

英雄譚としての構成はとてもシンプルで

キャラクターも定型であったため

物語としての奥行きが広がっていくのは

続編企画次第といえましょう(三部作やるのか?)

 

アンディ・サーキス版が

大のお気に入りになった個体向きの

作品ではなかったな~と

前置きではやんわり表現にとどめますが

ほめるポイントは終わってますので

自分のための文章へと続けます。

(ノリはドハゴジや炎の王国の記事に近い)

 

私が素敵だな、美しいなと受け取ったものたちが

別媒体企画で、続編企画で、そぎおとされていくの

何回味わえばよいのだろう。

なるべく情報を得て回避に徹するのみですが

波長の合う受け手も作り手も貴重なのですよね。

 

歴史が正確に伝わらないのも

伝承が歪んでいくのも当然のことではありますが

伝わらなくとも残るものはある、という余韻すら

全てなくなった世界をまざまざと見せられたことで、

シーザーたちが守りたかった世界は

もうどこにもないんだなあ、寂しいなあ、と

泣きたい気分になりました。ファンには勧めない作品ですね。

 

以下、感想です。

 

 

 

監督は『メイズ・ランナー』シリーズの

人なんでしたっけ?予告編を見て

あんまりおもしろそうじゃないなあ、と

思っていたのはストーリーではなく

映像面だったのかしらん、と今は思うのです。

 

冒頭でシーザーの葬式から始まりますが

これは私たちが愛した「彼らの物語」の

葬式でもありましたとさ。

ノヴァ嬢の姿が影形もない時点で

嫌な予感がするぜ~とはなりましたけど。

 

筋立て・キャラが型にはまっていること

自体には問題がないのですけれど、わかりやすい特徴抜きで

《AはBを愛しているんだな》といった関係性を

説明するのにはワンカットで充分であるにもかかわらず

そのワンカット抜きにストーリーが進行していくため

多分こういう狙いがあるんだろうけど全然ぴんとこねえ、の

繰り返しでエンドロールとなりました。びっくりしたよ。

 

のちに英雄とされるであろう

少年とその幼なじみたちのパートは

かわいらしかったのですが

あくまでもなかよしトリオだったので

幼なじみから恋愛にもっていくほどのパワーは

ヒロイン・ヒーロー双方になかったですし

後半にちょいちょい「好き」「愛する」単語が

出てきてめんくらいました。そうなの?

 

途中で出てきたお師匠ポジションのキャラが

お約束な感じで退場したところの見せ方が

あまりにも典型的だったので

逆に最終局面における救助キャラのフラグだな!?

→いやまじで死んでたのかい!!はすごかった。

 

人間キャラの女(彼女はメイズランナー出身?)についても

これはボーイミーツガールの組み立てを

本気でしているなら盛り上がる場面なんだろうが

救出担当はお師匠さんのほうがよかったんじゃね?ぐらいに

主人公とあんまり深まらないまま進んでいくので

女が同族殺しをしたり、異種族大量殺戮をしたりする場面で

悲愴感は伝わらねえな……やはり人類は滅ぼすべきだ、に

傾いてしまうので、最初から謎の第三者で進行してるほうが

色々盛り上がったんじゃないですかね。

 

一番ひでえなと思ったのは、エイプ社会が

完全に人類社会に置き換わってしまった結果

「家畜」の扱いの粗雑さが加速していることですねえ……

 

これは集落が焼き討ちに合う手前の場面で

道案内役の馬にケガさせているのを

「はっきり」と映像に映しているところで

(謎の光と馬の悲鳴に動揺している主人公のカットで伝わるので)

あ、合わない映像の処理をする監督だ、帰りてえ←となったのですが。

 

鷲使いが本来獲物となる対象ではない生き物を

鷲に襲わせ、かつとどめを刺している場面を

「良い」山場にするの最悪すぎて

主人公たちは二度と鷲を使役するんじゃねえ!!となりました。

ポケモン使いみたいな特殊条件じゃねえんだぞ!!??

 

私は同族を殺すなとは言わない・必要な時もあるんだろう、

ただそれは己が自分の手で選び取って返り血をきちんと浴びて

それに付随するあらゆる事象を引き受ける覚悟の上でのお話、という

認識なので、あの主人公の物語を追いかけていきたい、と

思える見せ方ではなかったのは確かです。

せめてとどめぐらいは自分でさせや、くそが。

ゴリラは相手の自滅だったからカウント外ですし。

 

しれっと鷲使いの一族として復興してるの

けっこう腹を立てておりました。

自分は責任を取って村を出ていく、

父さんの鷲だけは追いかけてきてくれるぐらいの

展開にすればまだ贖罪としてましだったかもしれんのに。

 

というかここまで書いてしまったので

続けてしまうのですけど

人間の女が八つ裂きにされる可能性スルーで

集落に姿を現した時(武器が短銃でしたからね)

青い服着てるのナウシカかな?と思ったし

上の展開を採用したらアシタカになるんだよなあ、ましとはいえ。