『佐藤史生 傑作短編集 夢喰い』

 

総特集と同時発売のため

そちらに収録されている短編と合わせると

(『雨の竜』と『青猿記』)最強布陣!

 

以下、感想です。

 

 

 

・『金星樹』

マッキーとネネは描き方が良い

年の差カップルであったな~と

横目に置きつつ、私は主人公の

アーシーが「与える」人であることに

涙してしまうのであった。

 

時間が異様に引き延ばされる

特殊空間に閉じ込められてしまった男と

事故から十年後、彼を追いかける

花嫁衣裳を着た女を見守ってきた

主人公は生涯独身なのであろうね……

 

正直、十年縮めたところで

それでも十歳近く年が離れている

状態なので、ほれちゃうマッキーの

引き取り手はネネしかいねえなあ!!

とは思っておりますけれど←

 

 

・『レギオン』

本来神々であったにもかかわらず

悪しき存在へ堕とされた「上位存在」たちが

大好きなのはこの作品の影響もあるだろう。

 

「聖書の神」は私にとっては

天敵だよな~、古典『失楽園』も

面白かったのですよ。

(史生さんは知らなかったとの談アリ)

 

性機能が分化している知性体で

混乱を招かないか?といった

やりとりがとても好きです。

「従順」なぞくそくらえである。

 

 

・『阿呆船』

解説通り、作者が何度か描いている

「宇宙を渡る移民船」ものの嚆矢と呼べる

作品なのですが、初読の私にはむつかしかった。

(まあローティーンでしたもんね←)

 

お話が難しかったというよりかは

イメージが浮かばなくて難しかったのです。

この頃はほぼ絵だけで読んでましたもんね〜。

 

移民船ものは、お猿さんをかわいがるお話が

好きでしたね、オチがホラーなんですけど!!

 

 

・『夢喰い』

『ワン・ゼロ』の元となった作品ですが

凝縮されていてこちらも大好き。

天井の模様はみんな通る道だろうな……

 

舞踊の動きをマンガに落とし込む点で

かなり熟練度に達している作家さんにつき

彫刻が動き出すイメージもすさまじい。

 

そういえばこちらにも

魔由璃さんがいるのでしたね!

 

 

・『バナナ・トリップに最良の日』

倭さんのシリーズはどれも面白いのですが

こちらが選ばれたのは、超能力を制御するため

仕事で異性装をしているゲストキャラがいたからかな。

 

超能力と生存能力の因果関係について

披露されている説はかなり好きなほうです。

役に立たない能力はいくらあっても不思議じゃない。

 

ところがオチでそこをひねってくるので

恋愛ものでもあったな!?となりますが。

 

 

・『羅陵王』

不老長寿の妙薬の由来は

恐ろしい伝染病であった、という

強い毒は強い薬にもなるのSF版。

 

作者お得意のアジアテイストが

作品の魅力のひとつになっておりますね〜。

 

 

 

・『塵の天使』

老人と暮らす美しい女性に

恋したはずが、その正体が!という

オチがお見事なのです〜。

 

途中でピグマリオンコンプレックスの

やりとりがあり、そこで読者が

だまされてしまうのもまた上手いのだった。

 

冒頭で主人公がゲイにアプローチ

されてるくだりがちと謎だったのですが

主人公が「男好き」ではなく「己好き」に

つながっていく仕掛けだったのですね……

 

 

・『一角獣にほほえみを』

プロデビュー前の作品で

坂田靖子主催の同人誌に

収録もされておりました~。

 

以前全集が続々出たときに

こちらも収録されたのですが

読んでびっくらしたのは間違いない。

 

プロデビュー後の別バージョンより

ロマンスの香り押しなのは

若さもあるのでしょうね、

なので主人公の大人度が増している

『一角獣の森で』が好きなんだろう~。