『どうぶつの国』

 

雷句誠の作品、完全版全14巻。

 

『ジャングルブック』の影響を受けた

『ジャングル大帝』のその先のお話と見せかけ

タイトルは国ではなく星が近いのだろうと

思わせる、本格SFであったとさ。

 

思想がしっかりしている作家の作品に

漂う安心感とは別格なのであるよ~。

 

以下、感想です。

 

 

 

母親にその生を祝福されることなく

捨てられた赤子が、たぬきの一族に育てられ

やがて星の運命を背負う立派な青年に

成長していく物語。

 

動物たちが大胆にデフォルメされておりまして

ほぼ獣人というデザインであったり

おしゃれな衣装をまとったりと

現実世界の「動物」らしさから脱却してありますが。

 

「食べる」「食べられる」という重いテーマから

逃げない作劇が魅力的です。正直なところ

動物がリアルデザインだったら

最後まで読めなかっただろうな~。

 

この星に生きる「人間」は全種族の動物たちの

(魚、虫、植物は除く、微生物もだろうな)

鳴き声・言葉がわかり、互いに会話することが可能ゆえ

主人公は苦痛の声を聴き続けたが故

誰も「食べられない」世界を目指すという

大きな目標を掲げるのですけれど。

 

読んだ読者みんなが疑問とするだろう

言葉がわからない魚なら食べてよいのか?の

問いが、主人公が赤子のうちに第三者から出るのはさすが。

 

肉食動物も食べられる「木の実」という

ハイパーアイテムがなければ

不可能だったとは思いますけれど

異なる種族がそれぞれの特性を生かし協力し合い

豊かに生きていく、というガッシュでも見られた

大いなる目標が、異種族間でも見られるのでした。

 

全生命の幸福が不可能であれば

みんな一斉に死んでしまえ、

自分の能力を行使した

殺戮こそ本能である、といった

極端論の見せ方もうまいのですよね……

 

作り物が自我を得たなら

どうなるか?とか難しい題材を

さらっとこなしているのでした。

作者が現生人類を信じている故

ハッピーエンドに終わるのであろうな~。