『積乱雲』

 

里中満智子の作品、全2巻。

 

生い立ちも思想も生き方も全く違う

三人の女性たちの戦中・戦後の物語。

共通点は恋人が特攻隊員であるというのみ。

 

満智子さんの太平洋戦記ものは

当時選挙権がなかった女性軸ということもあり

「一般市民」に寄り添うものになっております。

 

以下、感想です。

 

 

 

この物語は構成が本当にうまくて

愛した彼が去ってしまった!悲劇!!で

終わるのではなく、その後彼女は

どう生きていったのか、も含めて

戦後の変化を描いているのが素敵なのです。

 

個人的には一番素敵だな~と思った隊員が

生き延びていたのがうれしい……

満智子組も役者が決まっていますけど

ルツはいつもハードな役をやっているな!

 

満智子さんの男女男女した作風は

現代(正確には発表時と同時代)ものだと

ちときつい……と感じる時もあるのですが

《なぜ歴史の中に女性の物語は少ないのか?》という問いは

新作でも色あせない(状況は残念だけど!)ものですよね。

 

☆☆☆

 

里中満智子の歴史史観は

勝手に師弟関係にあると認識している

ちばてつやと同じく「一般市民」に

寄り添う、優しいものなのですよね……

つまり政治家や資本家、天皇家に目が向くことはない。

 

別に一人の作家が完璧である必要はないので

私はそれはそれでよい認識なのですけれど。

 

ただ昔なら、ちばてつや・里中満智子と

同時期に活躍していた作家陣に

今では「思想が強い」と言われてしまう()

メンバーがそろっていたものの

続々鬼籍入りしていることへの不安を

最近はつい考えてしまうのです。

 

そんな世相の中、あの内容で出してきた

鬼太郎映画は信頼しているし

ヒットしてることもあり、水木しげる作品に

触れる人どんどん増えたらうれしいな~。