六期の『ゲゲゲの鬼太郎』につながるお話として
製作された、目玉のおやじさんの昔話。
パンフレット再入荷のタイミングも
逃してしまったので読んでないのでした~。
元々、沢城版鬼太郎は現代風刺に
真面目に取り組んでいて好印象でしたけど
(見返して記事作ろうかな~)。
戦後復興期を舞台としても、戦中・同時代に対し
「批判的」視点をキャラクター交えて
織り込んでいるのが大変良かったです。
角川映画(配給東宝だけど!)の金田一シリーズぐらいの
ゴア表現かつ、性暴力表現の示唆描写があるので
ガード担当の保護者と一緒に見るほうがいいのでしょうが
若い世代に向けて「未来」の話をする作品は良いものですね。
以下、ネタバレです。
冒頭は現代ですが、昔話ということで
ほぼ戦後復興期・たまに戦中で
お話が進行しておりました。
これから高度経済成長期に突入する
戦後復興期も輝かしい時代ではないし
あれから70年近く経った現代でも
子どもたちをごまかせるような時代ではない。
それでも良き未来を目指して
生きていくし、去った者たちを
忘れることもない、というメッセージは
確かに水木しげる作品のものですね。
☆☆☆
戦災孤児・浮浪者が各所にいる
首都・東京が舞台の時点で
大量のたばこの煙やすりガラスなど
背景・小物に気合い入っているな~と思ったのですが。
いざ、物語の舞台となる奥深い山村に移動すると
財産を占有している一族のでっかい屋敷、ぶっとい柱、
当然存在している離れに座敷牢、豪華な欄間にふすま、と
見どころたくさんあって背景美術集欲しくなってしまいました。
実写だとかなりの予算をセットに割いてるタイプの作品ですね。
時代考証もきちんとしていて、例えばたばこの場面だけでも
咳き込む見知らぬ子どもへの配慮はしない、
がんがんポイ捨てするなど、歴史改変をしておらず
「その時代なり」の枠におさまっているのは
たばこ嫌いが見ていても、ストレスフリーでした。
(不自然なほどに吸わないのとか違和感ありありですよ)
(とはいえ、非喫煙者を喫煙者にするとかは論外ですけど!)
現実面の描写はわりと満足しているのですが
妖怪というよりは怪しい術方面
(鬼道衆は修験道ルーツだっけ?)では
気になっているところがありまして。
そこまで「当主」の種にこだわるのであれば
そもそも「開祖」の魂が起点では?とか
そのあたりなんですけど……(えぐみがアップするね!!)
わりと新しめの一族ならあのじじいが開祖でいいのかな、とか
そのへんをパンフレットで読みたかったのです。
以下、キャラクターのお話。
カプリングとかそういう方向は
まだ触れておりません。
★水木
過去時間での語り手となる水木は
『墓場の鬼太郎』出身のキャラクターではありますが
沢城版鬼太郎の育ての親につながるキャラの
三十代の頃(でいいのかな???)という造形で
顔立ちが昭和映画スターの系譜になっておりました。
物語の佳境にて、名家の女性が強いられた性的虐待に対し
動揺する場面がありますが、南方戦線の兵であったなら
当然、従軍慰安婦の施設や現地「調達」を見ているはずなので
(みんな水木しげるの戦記物を読んでいるよな!?)
参加して「ない」側なんだろう、という「良心」が見られますね。
弱者は虐げられるのみ、今度こそは勝者になってやる、という
マインドがそこそこあるものの、でも「自ら」踏みつけてまでは
上に行けないんだろうなあ……というバランスがよかったです。
★ゲゲ郎
水木が名付けたため、本名不明。
後に目玉のおやじさんとなるその人(幽霊族だが)。
正直なところ、奥さん大好きで本来は滅法強いけど
作中でよく縛られている、という印象が残りすぎていて
そういえば作中で人間のおちびさんと未来について
重要なお話……してたな!!と肝心の場面まで
忘れておりました。また見ると印象変わるのかな。
★沙代
今回のヒロインといいますか
キーパーソンのひとり。
名家の育ちのべっぴんさんですが
あくまでも田舎育ちの「お嬢さん」なので
東京の客人に対し、あこがれの気持ちはありますし
まして親切な二枚目であれば(相手は打算で接してるけど)
疑似恋愛的な気持ちも芽生えますよね~と
水木にその気がないのをいいことに←にこにこ眺めていたら
とんでもない展開が待ち構えていた……
私はこういう「助けて」ほしいと願った時に
妖怪や悪魔に助けられて「契約」して
魔に染まっていく女性キャラにものすごく弱いけれど
いつまで孕む側ばかりそんな役回りなのかという不満もあるので
現代・未来設定だったら怒っていたな!!
最後にお迎え担当になっていることは
解釈違いだったのですけど
彼女が浄化されるような色々が
あったの……かも???
★時弥
今回のキーパーソン。
いわゆるラスボス戦にて、体を亡き当主に
乗っ取られたことが判明する悲劇の少年。
現代でも、目玉のおやじさんと
最後に対話する重要人物。
サスペンダーの短パン少年は良いものだ……と
にまにましていたら申し訳ない気持ちに。
沙代と時弥があくまでも「そこそこ」の仲良しということで
現代でのやりとり~浄化の流れが弱かったのは
結構不満に思っているのかもしれない。
さてカプリングの話となるので
しばし空けます。
☆☆☆
★沙代→水木
作中時間軸だけでも
関係性が目まぐるしく動いており
一緒に生き延びていれば、また違う
表情を見せてくれたのだろうな~と
ほぼ沙代嬢のことばかり考えてしまっています。
上でも書きましたけれど
水木は野心家ではあるが、沙代に対し
「恋愛方面」で取り入る気持ちはほぼない
(好意を利用しているが、父の許可下りそうでも結婚までは狙ってない)という
保護者に恋する子ども VS 無性の愛を与える保護者萌えには
大変おいしい状態ではありましたしね~。
一応表記は女性→男性にしてしまいましたが
全ての記憶を無くした水木が口にする
《彼女》とは誰を指すのか?に期待してしまうのであれば
彼女が都会の女性として成人したあかつきには、を
妄想してしまっても、ばちは当たらないのであろうか?
★長田と乙米
わりと序盤から肉体関係があるのかないのか
ものすごく気になった組み合わせ。
でもあの一族におけるおんなの役割と
三番目の妹さんのあの言動からすれば
寝てないのに「執着」が強い二人、ぐらいの
強度はありそうなんだよな。
かつて「おじょうさま」と呼んでいた時間が
間違いなく存在するんでしょうね~という
過去軸では妄想すると、すごく楽しそうなお二人です。