さいとう・たかをの作品。
最初は55周年キャンペーンで入手した
55巻までの感想記事にする予定だったのですが
名作と名高い「海へ向かうエバ」の
衝撃がすさまじく、一度切るのです。
もうネーム、覚えちゃったんだけど
紙の本欲しい~。
以下、感想です。
劇画の第一人者である作家が率いる
プロダクションが送る問答無用の傑作。
私にとってマンガと劇画の違いは
「台詞が一息で読めるか否か」なので
文章がとにかく読みづらいわけですが
だんだん慣れてくるのです←
女子ども含め、登場人物の死亡・拷問・強姦率高めという
暴力に満ちた世界でも、読み心地は快適なほうです。
これは、さいとうプロの頭領であるさいとうさんが
世界情勢の分析精度がかなり高い描き手である、かつ
「人権」をめぐる戦いに冷笑的まなざしを向けない、
というのが大きいのである。
まあかつて、劇画の最先端だった作家陣は
左派思想の扱いがきちんとしておりましたから……
特に女性を虐げる行為に「嗜虐心」があると
描かれてるのよいな~。加害者は全員、死んでくれ(わりと死ぬ)。
主人公というよりかは狂言回しである
ゴルゴ13ことデューク東郷は
その容姿により「有色人種」差別を受ける場面は
多々あるものの、金を出す依頼人に忠実な暗殺者故
特定他者・思想のヒーローに非ず、というエピソードを
定期的に織り込んでくるのも見事ですね~。
紀元前からの偏見は、いつの世も現役という現実世界ですから
レイシストがレイシストとして描かれている限り
その思想・言動自体を封印してはならないな。
クソ野郎は人種も年齢も宗教も関係なくクソ野郎です。
☆☆☆
21巻までだと
白夜のお姉さんとか
暗殺者相棒の盲導犬とか
魔笛モチーフのお嬢さんとか
要するにベタなメロドラマ風味の
お話が好きだったりするわけですが()
エバさんのエピソードの演出がさえわたっていて
来世とか別世界では結ばれるんですよね!!??と
ファン・不安レターが飛び交ったであろうことは想像がつく。
さっさと夫婦になっていれば
互いがターゲットになることもなかったろう……
(そういう他作品は大量にあるのであった!)
いつもなら作中ノルマ的な濡れ場もしっとり描かれとるし、
最後まで仕事人の義は通した上で
童心に帰るエバさんはとても美しかったし、
ラストのスコープ画面、すごくいいよな……