『西部戦線異状なし』

 

「この書は訴えでもなければ、告白でもないつもりだ。

ただ砲弾は逃れても、なお戦争によって破壊された、

ある時代を報告する試みにすぎないだろう。」

という有名な冒頭文に始まる、ドイツ戦争文学の傑作。

 

(日本国内で上映がまだない)Netflix版を

見る勇気はないので、小説を読むの巻。

 

以下、感想です。

 

 

 

まだ妻子や職業といった「何かを持っていない」

可能性は無限大であった「青年」主人公を中心とした

戦場での平和な・危険な日々の記録です。

 

基本的に淡々と叙述されていくのですが

主人公が一時休暇にて故郷に戻った際に

「もう出征前には戻れない」という感傷を得てから

悲壮感が増していくとは思います。

 

与えられた環境が全く違うため単純比較はできませんが

フランクルの記述に出てくる、迫害下で内省を深める人々と比較すると

(「愛」とは相手の実存にもはや関係なく己と共に在る、とかそのへんね)

「戦友」が最も大事な、ナイーブな若者たちの集団という印象になります。

 

フランクル筆頭、良い人はみんな死ぬ環境下で

生き残ってからも思考できる人々は「強者」である

ということはまあわりと正しいので。

 

軍事動物の負傷・死亡の話が本当に嫌なので

利用するならまだロボットやドローンやAIのほうがましかな……

でも戦争は「人間」だけでしてほしい。

 

農家出身の人が「戦のない軍隊が良い」と話すのは

貧しい生活が悪い!!となるのです。

おいしい肉に関係するエピソードは

どれも明るい。基本的に泥棒であるが。