復刻版『ファイヤー!』

 

水野英子の作品、上下巻。

 

少女マンガ史に燦然と輝く傑作が

復活ですぜ!!

水野英子全集企画するなら

早いうちにしてくれ〜、買うので!

 

重要なのは連載が1960年代中に

開始されているということなんだよな~。

世間で取り上げられがちな70年代作品に対し

その前の作品が軽視されますが

土台がないのにいきなり百花繚乱とはならんのだ。

 

セックスとバイオレンスをきっちり扱っている

「少女マンガ」雑誌としてのセブンティーンは好きなので

廃刊になったから難しいでしょうが

特集本いつか出してほしい〜。

 

以下、感想です。

 

 

 

冒頭にて主人公アロンの「悲劇」を

語る物語であるということは暗示されておりますが

主要キャラの退場が続くぐらいから

悲劇の坂道が急勾配になっていくので

読むのが大変です。

 

恋愛って難しいですね……という描写揃いであり

特定パートナーを必要としない美女マージや

あくまで慰めの偶像を必要とした大富豪レイナーあたりが

印象に残るのでした。

 

レイナーさんが少女の歌手に「恋した」と

主張しないのは、自分の気持ちをわかっている点で

本当にまともなのであるよ。半世紀前なのに!

 

初めて読んだ時は二十代だったから

そんなもんか、と引っかからずに読み進めておりましたが

三十代すぎて読み返しますと。

 

いや、アロンが「惚れて」るのは

ずっとずっとウルフだけなんだから

身代わりがほしい、さびしい、飢えているを理由に

他の女に手を出しちゃダメじゃね!!??

不能でよかったですね!!!!(ひでえ)と

叫ばざるを得なくなるのであった。

 

バイであるシェールさんが登場しており

いっそ彼と寝てしまえば自覚したのかもしれんですが

そこは60年代作品の限界かもしれない。

現代ならアロンの性自認あたりにもっと踏み込めそう。

 

友愛対象と恋愛対象と性愛対象と

性的対象の区分があいまいなのって

まわりを不幸にするだけなので

ささっと自覚はしておくべきですよね(ブーメラン)。

 

人間の三大欲求は食欲・睡眠欲・排泄欲だと思っている派なので

単にきさまは排泄してすっきりしたいだけでしょ、と

切り捨てられるのであった。

 

個人的には世界を諦めた主人公より

従順であることを己に許さない

黒人やインディアンの皆さまのほうが好みだし

すごくかっこいい人々だ、と思える側なのだった。

 

☆☆☆

 

ちなみに自分のハンドルネームは

ペンネームと同じく「水のしずく(水野雫)」ですが

水野先生と苗字を同じにしたかったわけではないです!!

(しずくを使いたくてダジャレにしただけなんだ・爆)

 

ちゃんと作品を読めるようになったのも

私が中学生にあがってからだもんな~。

 

ただカットはすごく印象に残っている作家さんで

(たしか『星のたてごと』のリンダ姫です)

このすばらしい絵を描く作家は水野英子というのだな、

という覚え方を幼少期からしておりました。