『西洋骨董洋菓子店』

 

よしながふみの作品、全4巻。

 

インタビュー本を入手したところ

思ったより文字が小さい(つまり量が多い)ため

作品読み返しながら進めたいな~と

ちまちま電子版を集めているところです。

 

連載開始99年時では10歳だったため

でこちゃんと同年代認識でしたが

すっかり橘さんたちと同年代になりました。

 

ちょっと同人誌の内容に

触れているところがあるので注意です。

 

以下、感想です。

 

 

 

ちょっと「特別」なケーキ屋さんを舞台とした

オムニバスもの?と見せかけて

主人公・橘さんの物語が立派な幹として

描かれているなあ、と読み返すたびに思うのです。

 

ケーキがものすごくおいしそうで……!!

 

私は乳製品消化できない(加工品のチーズはいける)のと

ヤング・シャーロックのトラウマにて(スピルバーグが悪い!)

生クリーム見るとぞわぞわしてしまうのですが

ケーキがどれもおいしそう、と思えるすばらしさ。

 

でもエイジくんの焼き菓子のほうが食べたさ満載かな。

彼のお菓子に与えられる「華がない」という評価は

自分にも刺さるのであった。

 

でこちゃん視点で読んでいた頃とは

また違う景色も見えるのですが

子どもの頃に「大人になったらわかるのか?」と

ぼんやり読んでいたところは、わからない側の大人になりました()

結婚へのこだわりとか、年とった女への評価とかそのへんね……

 

橘さんは幼少期の事件により

対男性「性嫌悪」になってしまっただけで

本来はバイセクシャルなのでは?と思える人ということもあり

同人誌の展開は時間が経つとありかも???となるのでした。

 

高校生の時の「告白」に対し、罵倒に至った心境を

本人がきちんと「わかって」いるのが素晴らしいのです。

あれに救われた「女の子」はたくさんいるんじゃないかと

勝手に思っていますけれど、そういう評論はあまり見ないな。

 

最近アセクシャル作品増えたな~と色々読みますけど

「性嫌悪」の解体をきちんとしている作品は

あまり見かけないので。橘さんが未だに一番「共感」できる。

 

☆☆☆

 

千影さんは今だったら発達障害の

診断出そうな印象もありますけれど

あれほど「無害」な男性もいないのだった。

娘をちゃんと他人として扱える「父」は貴重なので。

 

でこちゃんが生まれた経緯もわりと納得で

桜子さんと共同体パートナーになるのは難しいし

でこちゃんが私ぐらいの年(アラサー)になったとしても

良好な「親子」三者関係でいられそうなのが素敵です。

 

自分もでこちゃんぐらいの子どもがいてもおかしくない

年になりましたが、本当に「実子」が欲しいなら

桜子さんみたいに行動すればよいという学びを得たこともあり

(ぶっちゃけ必要なのは精子であって、交尾ですらない)

子どものいない人生に深刻に悩むこともないのであった()

 

☆☆☆

 

よしながさんは小野さんの「魔性のゲイ」なる

描き方について思うところがあるようなんですが

子ども時代の私からしても「自傷行為」にしか見えなかったので

専門家の助けが必要な状態なんだよなあ。

 

多分異性愛者でも両性愛者でも同じ感想になるし

橘さんが気にかけてしまうこと自体につけこんだ

同人誌の行為については凶器を持ち出す。

読者・別媒体の制作者がどう受け取ったかについて

現実の同性愛者に配慮が足りない、という点には賛成しますが。

 

まあ小野さんが女性であの生き方をしていれば

妊娠・堕胎・出産・育児あたりの要素が

回避できなくなるので、オスはのんきだよね……

ジルベールが男の子な件でもちょっと思ったりする、のんきだと。

 

あと小野さんが「告白したかっただけ」の冒頭場面については

橘さんが罵倒するに至るまで、話さなくてよかったとしても

「恋愛対象であることを伝えることの加害性」の自覚が

足りてないんだな……というのを可視化してくれた点で

ものすごく感謝しているのであった。

 

第二次性徴を過ぎた時点で

「恋愛対象」としての好きに「性愛」「性欲」が

どうかかわっているのか言語化は避けられないのですし

言い逃げはいかんのです。自らの黒歴史を顧みる。

 

正直言語化を強いられるのはマイノリティーだけといいますか

ヘテロは恋愛対象云々でそこまで考えもしないことについては

のんきですねえ、と文句は言いますけれど。