『トップガン マーヴェリック』

 

なかなか時間が合わなかったのですが

思い立って、吹替版を見てきました。

 

宮野さん担当の役が原語でも

あんな感じで物足りないのかは

ものすごく気になったのであるが

原語版……いつ行けるかな?

 

よその感想にて、ものすごく出来の良い

「米海軍プロパガンダ」とのワードを見かけましたので

よっしゃあ!受けて立つぜ!!と受けた結果

大変楽しませていただきました。

 

テイクオフ!タッチアンドゴー!ブラックアウト!不時着!

あたりのフレーズにテンション「上がる」方には

大変おすすめな作品でありますね。

 

(私はガメラ2に対する共産党の評価も、

作品の本気度もどちらも認めているので、

プロパガンダ認識自体はマイナスではない)

(そうであるなら、戦中の円谷は!?)

 

以下、感想です。

 

 

 

トム・クルーズにあまり縁がない人生を過ごしているので

しみじみと演技を見るのは初めてかもしれません。

いやー、かっけーじいちゃんになってるなあ……

 

まずほめるポイントから進めると

青池保子×新谷かおる×「新たなる希望」のため

心の中に戦闘機愛が暴れている方には

ものすごくおすすめです。立川の極爆に行きたいよう!!

 

戦闘機他のメカも充実しており

バイクが未だにKawasakiで!

船には帆を張るのだ!!という

最重要事項の宣伝が足りないのでは!?

とめんくらいました。

 

そのカットをわざわざ映すからには

あれをやるのだな!?というお約束を

フルスロットルでクリアしていくので

メカ好きにはたまらんですね~。

 

みんな大好きトムキャットことF14が大トリだぞ!

テイクオフにひれ伏せ!!のくだりパートは

酸欠になるかと思いました。

ちゃんと車輪がぶつかってくれたしな……

(さすがに実写映画でミグかっぱらう軍人は出なかった!)

 

とはいえ予告カットが続きすぎた関係で

かわいい鳥さんたちがわさわさ映ったぞ!

→やべえ、絶対バードストライクで

鳥さんたちが黒焦げになってしまう!!のくだりは

噴きそうになったんですが。

 

パイロットたちは墜落の危機で切実なはずが

それ前振りするのか!?というところ……

あれはマッチョ思想持ちだと笑えるのかな?

 

ちゃんと役者に戦闘機のGをかけて

パイロットが操縦しているコクピット内で

撮影しているため、操縦経験があればあるほど

シンクロ率の上がりそうな作品である。

 

バイクや自動車程度の経験でも

呼吸や姿勢、踏ん張りを合わせようと意識してしまうので

(ロードレース好きだと伝わりそうな感覚)

ブラックアウト手前あたりは大変であった。

 

高速道路でアクセル踏むの大好きドライバーであり

愛車=相棒のため、まだまだいける・大丈夫などと

ふつーにしゃべりながら運転してるので

「わかる」動きのオンパレードでしたね。

 

☆☆☆

 

人間ドラマ部分は、過去作ちゃんと覚えてないとはいえ

(多分見てたとしても、トムキャットとミグ部分しか

覚えてないぐらい昔と思われる・汗)

示唆描写がちょくちょく入るのでわかりやすかったです。

 

恋人さんは1作目に姿を見せてないんですね、というのは

すごく納得しました。お互い嫌いになったわけではないけれど

上手くいかなかった、自立した女性の描き方が見事。

 

娘さんがあの年で、自分の親は「親」という生き物ではないということを

わかっているお嬢さんなので、めっちゃハグしてあげたい!

あ!でも犬がいるなら、わしはいいな!!と引っ込む感があります(爆)

 

パイロットの若人どもは、ちょっと原語版のほうで

距離を確認したいところかなあ。

中村さん担当していたハングマンは

ずっけえ役ではあった、ぐらいしかつかめなかった。

訳ありの息子さんは、もう少しニュアンスある気もするので。

 

あと気になったんですが、今の戦闘機パイロットは

眼鏡いいんだっけ?(遠視なのかな、彼は)

ハングマンがタバコ吸えないからか、棒くわえてるのも

気になりました(チュッパチャプスだろうか?)。

 

☆☆☆

 

この作品がプロパガンダであることを全く否定できない理由は

軍事兵器を軸とした物語でありながら

「戦闘機を操るパイロットはかっこいい!!」を前面的に押してくる

ふわふわしているところが大きいのでしょう。

 

兵器ではなく、操縦者がかっこいいを追求したいなら

ロードレースにおいで……エアレースでもいいけど!

と正直なりますもんねえ、そちら畑としては。

 

米海軍全面協力(戦闘機は空軍じゃねーんだ)のため

圧倒的プラスイメージで押し切る必要もあってか

敵国の名前も地域もひとかけらも出てこないのは

えー!!となりました(まあロシア傘下想定だろうが)。

 

大量破壊兵器の稼働を止める、という

ものすごくかっこいい理屈で

前線に厳しい作戦で向かってますものね。

相手がデス・スターならよかったのにね……

 

あれだけの戦闘機飛ばすからには

そのぐらいの見返りは要るんだろうとはいえね。

撮影方法を知りますと、おいおい

一体いくらかけたんだ……となりますし。

 

この物語におけるマーヴェリックは

湾岸戦争・アフガンイラク戦争の従軍経験があり

間違いなく敵国兵を惨殺してきた「職業軍人」なわけですが

「兵器」による死を意識しなければならないのは

仲間が死ぬことのみなのか?という視点は

足りないどころか皆無ですね。仲間の死も弱い。

 

これは前線で戦う仲間たちが、自分の子ども世代の

「若人」となってしまっているのが

かなり大きいのでは?と推測できるので

ちょっと過去作を見ておきたいところ。

 

☆☆☆

 

しかし観賞中に、新谷作品はちゃんとしてたのになあ……と

思い出す軍事映画もそうそうないんだよな。

(軍事映画じゃないから、とも言えるのだが)

 

あれだけ「兵器」「道具」愛にあふれていながら

「人間」との距離感を常に意識してくれていた

傑出したマンガ作家と比較してはいかんと思うのですが。

でもこっちはあれで育ってますからねえ。

 

新谷作品ならパイロットはかっこいいだけじゃなくて

戦闘機を操縦して戦地に向かうのは怖いし

兵器は敵兵に撃墜されるだけじゃなくて

自軍の整備事故で炎上することだってあるし

血まみれの機体や黒焦げの死体がちゃんと画面に出るのになあ。

(バイク・ロードレースものですらそうなんだよ!!)

 

あちらの憎悪もこちらの悲哀も

人間であれば等しく同じで分断されるものではなく

どちらかの悲哀だけが重視されるものではないのだ、とかさあ……

 

冒頭にマッハ10のテスト飛行エピソードを

持ってきているにも関わらず

主人公がパイロットとして突出した人材であると

示したいためか、あれほどの爆進力をもたらす燃料・機体は

人間が扱うにはそもそも怖い物質である、とか

そのへんの配慮すら抜けてるのがなあ。

 

力強く美しいものと恐怖は等価であることは

ちょっとでもいいから示唆してほしいものなんだよね。

ガソリンやオイルの匂いとか、子どもの頃から大好きだけど。

 

私はパイロットだけでなく、最高の人殺し機械に魅せられた

たくさんの人々のある種の「業」を見たいので

開発者や整備士や誘導員たちのピックアップが、もっとほしいものなのです。