『ゴジラ×メカゴジラ』

 

手塚昌明監督の作品、2002年公開。

 

今年二十周年を迎える

ミレニアムシリーズのゴジラ映画です。

 

ちょっとパワーが足りないところはありますが

女性主人公を「人間」として描き

対抗悪役のゴジラ、味方兵器の機龍、

兵士だけでなく支える科学者や政治家たちも

魅力的に描かれているという点で

大好きなゴジラ映画のひとつです。

 

以下、感想です。

 

 

 

怪獣語りの前に人間の話をしてしまいますが

メカゴジラパイロットである家城茜さんの

描き方が本当に大好きなのです……!!

 

天涯孤独の身の上で、陣中にも敵アリ

常に仏頂面のお姉さんであっても

スクリーンの中で輝くことはできる、という好例。

 

『隠し砦の三悪人』の雪姫さま好きには

刺さるキャラクターだと勝手に認定しています。

そういえば彼女も最後の微笑みを美しいと思うんだな。

 

もう二十年も昔のキャラクターですが

時おり釈さんが昔話をする時、ずっとずっと

大事にしてくれてるんだな、とわかるのも嬉しいです。

 

女優さんの映画撮影苦労話なんて

こなすアクションの量が!

全身筋肉痛がずっと続いた!!とかそんなんがいいのだ……

 

☆☆☆

 

彼女が物語の中で大人の女性として

ハラスメントを受ける場面はありますが

周りの反応、本人の対応がしっかりしているので

「作り手」に対する反感がわかないのもポイント高いです。

 

例えばメカゴジラ開発チームの科学者である

やもめおいちゃん(小学生の娘持ち)が

わかりやすくモーションをかける場面。

 

当人は《なにこの人》と顔に出して

わりと無視して困ったしぐさは出しませんし

(お手伝いをしている娘さんとは会話する)。

 

兄が殉職した関係でやつあたりしてくる同僚が

度を越したセクハラ発言をすれば

モーションかけてるおいちゃんも非難するし

その後当人は「いいかげんにしろ」と相手をねじ伏せる。

 

私は軍事訓練をしっかり受けている女性が

不当な扱いに対し、真っ当に抵抗する場面を

せめてフィクションでは描いてくれ派なので

大変かっこよく、痛快であります。

 

肝心のセクハラ発言の内容ですが

「おっさんを惹きつけるフェロモンでも出してるのか(意訳)」という

相手を「人間」扱いしない態度を

最初に示したのはそちらであり

問答無用で顔面ぶん殴られても

文句言えないぞ、ぐらいの社会合意は正直欲しい。

 

☆☆☆

 

初代ゴジラの骨を活用して(一作目で溶けてるはずなのでパラレルだよ!)

対ゴジラ最強の兵器を作るという全体の物語の流れや

ちょっとした細かい描写(知り合いを見つけてほっとする場面や

子どもの生活に配慮しスカウトする時の台詞の選び方など)は良いとはいうものの。

 

茜さんと沙羅ちゃん(やもめおいちゃんの小学生の娘)や

茜さんと機龍ちゃんの「交流描写」については

あと一瞬、もうひと押しの場面あればいいのにとは思うし

既存創作物に寄る場面で押し切る力強さは足りないし

(とはいえヤシマ作戦でなくとも、電力エネルギーを集める話はあるんだが)

もうちょいCG予算あればど派手にできた戦闘場面もあるのですが。

(自衛隊協力はしっかりしてるほうのゴジラ映画なので、そっちは不満ない)

 

モスクワフィル演奏による大島ゴジラが

大変すばらしいことも合わさって

(他楽曲の流用はないよ!やったね!!)

大変満足しているゴジラ映画です。

VS世代だけど、続編含めVSより上に来るよ。

 

ゲストさんの使い方も面白くて

『ガメラ2』の渡良瀬さんを演じた役者さんを

出しちゃうところ以外は気に入ってます。

あれはちょっとなあ……

 

一番嬉しいゲストさんは水野久美。

彼女を呼べたことで、過去の歴史を語る

首相という重要役どころを女性に出来たのだ!!

 

 

以下、怪獣のお話。

 

 

★ゴジラ

いわゆる釈ゴジラ。

ごつごつした背びれ(ギャレゴジに近いな)と

きりっとした面構えが大変良い。瞳や光線もかっこよい。

 

フィギュアを買おうか迷ってるうちに

高騰してしまったため、まだ買ってないゴジラです。

 

本作のメカゴジラが使用する

最終兵器の直撃を受けても死ぬことはなく

でも大ダメージは受けたし帰るが

また来るよ……というエンドロールの背中が印象に残ります。

 

 

★三式機龍

本作のメカゴジラ。

個人的には初代さんの次に好きです。

 

パイロットに負荷がかかりすぎるため

操縦は遠隔操作で行う(専用メカがある)の説明を聞いて

いやこれ、危機的状況で搭乗するフラグだな!?と

みんなが思うのは、マンネリではなくお約束なのです。

 

初代ゴジラの骨を活用し、ゴジラのDNAを

操作系統にもそのまま採用してしまったため

ゴジラの咆哮に反応して、暴走する……については

理由付けはしっかりしているので気にならないです。

 

初代ゴジラ由来の兵器という彼の性質は

続編の『ゴジラ×モスラ×メカゴジラ 東京SOS』にて

ひとつの完成形を見せてくれます。そちらも含めて好きだな!