『ボクの手塚治虫』

 

矢口高雄の作品。単行本発行は1989年。

 

矢口さんの訃報を受けまして

この方も去る時が来たのだな、と

電子書籍を色々集めてしまいました。

(実家にある『釣りキチ三平』どうしましょう?)

 

前々から気になっていた

矢口さんによる手塚さん思い出話です。

好きな方のフィルターを通した

好きな方の姿って本当にまぶしいものだな。

 

今年秋田で開催されている

原画展には行きたかったのですけれど

生きていればきっと行ける日が来るでしょう。

 

以下、感想です。

 

 

 

戦中からマンガが大好きだった

「高橋少年」が手塚作品に心酔していく

その道中の物語。昭和史としても傑作。

 

絵に最も影響を与えた白土作品への道は

また別の作品で語られることですね。

あれも傑作なのである。

 

矢口さんの絵で物語られる

手塚作品がこれまたすごいのですが

詳細に描写される『メトロポリス』は

私も大好きな作品なのですごくわかるな〜。

描き込みはあのぐらいの密度で見えてたよね。

 

ミッチィとケン一くんの最後の戦いは

矢口さんの目には女の子に見えていたのか……

なるほど、なるほど(私は男の子派です、うふふ)。

『ジャングル大帝』のコンガが好みなのもわかる。

 

少女クラブ版『火の鳥』のギリシャ編を

恋愛物と受け止めた満智子さんもそうですけど

(台詞では兄妹の結びつき扱いだった)

読者に「見えた」物語が

その人にとっての本当になるのですよね。

 

手塚さんが年賀状を返してくれたエピソード

すごくいいなあ……その後の矢口さんが

必ず読者に返事を出していたのも納得です。

 

うちの母はミネコさんの

直筆イラスト(えんぴつ描き)を

ずっと宝物にしているのでした。

(私は懸賞は当てますけど、お返事はないので)

 

手塚さんの口にした矢口作品評価が

とてもうなずけるものでさすがです。

矢口さんが世に出たのはちょっと遅いので

他の皆さんほどは強烈対応では

なかったんだな(笑)ともなったけど。

 

柱は手塚作品となりますが

秋田の奥深い農村に生まれ育った

高橋少年の昔語りが

大変魅力的に描かれています。

 

数コマで描写が終わっているけれど

・嫁を「こきつかう」農家の主である祖父

・日射病から回復してすぐ働く母

・百姓にはならねえ!!と叫ぶ少年

ものすごく重い一場面ですね……

 

まあ矢口さんはデビュー作が

『長持唄考』のお方ですし……

これについては個別記事書きます。

私が「一番」大好きな矢口作品。