『猿の惑星:聖戦記』

 

今年一番楽しみにしていた作品なので

他記事を後に回します。

 

GODZILLA遠征にて

台湾の映画館に行った時に

2作目の予告編を見まして。

あちらの映画館はオリジナル予告編

そのまま使っていたので、見たくなる映画がたくさんあったな~。

 

これは間違いなく猿の惑星なんだけど

私が見てないシリーズだ……

そして絶対に好きな映画だ……

と確信し、1作目をレンタル鑑賞し撃沈。

2作目もすばらしい映画で大満足。

 

最終作ということでどう描くのか、着地するのか

とても難しい物語だったと思いますが

関係者の皆さまがまさに頂点となる

偉大なる一作に仕上げてくださったことに

ただただ感謝するしかありません。

 

今の子どもたちはこんなにすごい映画を

幼少期に観られるのか……羨ましすぎる……

振り返った時もすばらしい体験になること

間違いありませんからね。

 

以下、ネタバレを含みます。

 

※17.11.30、キャラクター名のミスを

修正しました。※

 

 

簡単なあらすじ。

 

コバの裏切りにより

人とエイプが全面戦争に突入してから

2年の歳月が流れた。

 

エイプたちのリーダーであるシーザーは

行方をくらまし今も戦い続けている。

ある日、人の軍隊はついに

シーザーの秘密基地を発見する。

 

シーザーらは軍隊にひとまず勝利した。

彼らのリーダーである「大佐」に

伝言を伝えるため、捕虜の兵士を解放する。

 

戦いが終わった後、新たな隠れ場所を探して

旅に出ていたロケットとブルーアイズが帰還した。

新天地に向かうには長い旅となるため

ひとまず休むことにしたシーザーたち。

 

その夜、大佐の部隊が基地を襲撃し

幼いコーネリアスは無事だったが

シーザーはコーネリアとブルーアイズを失う。

 

再度の襲撃を受け、急いで新天地に向かうエイプたち。

ブルーアイズと恋仲だったレイクに

息子を預け、シーザーは独り旅立とうとする。

妻子を殺した「大佐」に復讐するためだけに。

 

長い旅路の果てに

シーザーが辿り着いた場所とは──

 

☆☆☆

 

 

 

 

 

 

 

 

イントロの20世紀FOXで

もう泣きそうになりました。

あの旋律はこんな風にも響かせられるのか。

 

導入部のあらすじは完璧の一言。

前作を観ていたほうが

楽しめることは間違いありませんが

観ていなくても掴める内容かと。

 

人類にとってかわった

猿たちの世界を描く物語が

前提となってはいるのですが

「人を人たらしめるのは何か」を

追求し、描ききった物語。

映画史に残る傑作がまた増えました。

 

2作目は物語がわかりやすい二部構成だったため

インターバルつけてほしいな……と

思わざるを得なかったのですが

今作は一気に駆け抜けていったので

長さはあまり感じませんでしたね。

 

シーザーの一生を描ききった

リブート版『猿の惑星』三部作は

オリジナル版の『猿の惑星』シリーズに

直接繋がっていく物語ではないと思います。

というよりは繋がってほしくない。

 

その後の人間たちと猿たちの関係が

あんな風に変わってしまうなら

シーザーが最期に見守った景色は失われ

彼が本当に死んでしまったことになるからです。

 

これはどういうことなのか?と問われた時

大人がすぐ答えられる環境は必要と思いますが。

 

場面を変える、カメラの位置を変える、

一部だけ見せるというように

直接残酷描写を極力排除するといった配慮は

子どもにも見せられる範囲におさめていると思います。

むしろ見せるべきなのだろう……

 

パニックスプラッタ描写というのは

人を描くために本当に必要なものでは

ないのですよね。

 

既視感のパッチワークに終わるのではなく

物語の土台が立てられた後に

良い意味で過去の名作映画の要素が

そこかしこに組み込まれている

楽しさというのもありました。

私が思い出したのは『乱』を筆頭とする黒澤映画

『戦場に架ける橋』『アラビアのロレンス』『ドクトル・ジバゴ』

『大脱走』『スター・ウォーズ』『地獄の黙示録』などですね~。

あと50年代のワイド画面、スペクタクル大作あたりもかな。

 

音楽も作品の性質を存分に発揮していた

冒頭からクライマックススコアだったと思います。

これはオスカー取るんじゃないのかな。

 

以下、キャラクターと

これからの物語についての語りです。

 

 

☆シーザー

第一作目の時点で

相当完成されたキャラクターでしたが

ここまでの変化を遂げたことを丁寧に描いた脚本

そして演じきった演者の力にただただ脱帽。

 

数年前から私はうだうだ文句を言っているのですが。

 

アンディ・サーキスに一刻も早く

アカデミー主演男優賞を与えるべきです!!!

 

完成された映像は特撮技術の賜物だからとか

いつまで思っているのでしょうね。

あれが生身の人間がもたらした演技でないと

みなすならば、演劇関係者なんてやめてしまえばよい(暴言)

 

ハリウッドの権威については

思うところがなくもないですけれど

でも権威ならたまには威厳を示しても

いいんじゃないですかね~。

私の中ではもう3回目のノミネート

確定ではあるのですけれど。

さすがに今回はあると思いたいな~。

 

2作目でシェークスピア演劇主演の片鱗を

見せていたシーザーですが

3作目は完全にシェークスピア役者が

やるべき役になっていたと思います。

コバさんの亡霊だけが決め手じゃないですよ(笑)

 

『猿の惑星』という物語の縛りがあることで

救われたキャラクターだったとも思っています。

他の作品であったならば

孫世代の裏切りとかそういう展開も

見なければならなかった可能性がありましたので。

身内のごたごたがコバさん周辺に

とどまってほっとしました。

 

もしかして彼の死で三部作は終わるのかもしれないと

心の片隅に留めておいてはいましたので

最後も落ちついて見ることができました。

 

ジアッキーノの用意した

ホームのテーマは本当に美しいですね。

彼の見届けた、守り抜いた美しい世界が

いつまでも続くことを願ってやみません。

 

これほどの魅力あるキャラクターを

作り上げてくださった関係者の皆さまに感謝を。

シーザーに限りませんけれど。

 

 

☆モーリス

このような素晴らしい方となら

人生がさらに豊かになるに違いないと思える

美しいキャラクターであるオランウータン。

 

彼が音で言葉を発するのは

本当に大事な場面にとどまっているのです。

シーザーが惑う時も堕ちそうな時も

いつも静かにそばにいてくださってありがとう。

 

演者は女性ですけれど

アカデミー助演「男優」賞を与えてほしいな!!

キャラクターが男なら

男優じゃないのか?と思っていますので。

前作ならコバさんだったのですけれどね。

 

二作目の感想記事は多分作っておりませんが

コバさんの感情と理性との間の揺れと

境界を越えてしまってからの怪演は

本当にすばらしいの一言で。

彼の行為は一生許せないけれど

(アッシュくんの場面で息止まるかと思いました)

大好きなキャラクターではありました。

 

 

☆ロケット

1作目にて群れのリーダーを

シーザーに奪われたという経緯から

シーザーの仲間の三番手という印象が強く。

2作目でコバさんが大立ち回りを見せている故に

あまり強い印象が残っていないのですが。

(息子のアッシュくんのほうが強烈でした。)

 

3作目は確かに「親友」なのだなと

思えるようになりました。

モーリスさんとは違う形で

復讐に心囚われているシーザーの

味方となってくれている。

 

モーリスは「助言者」という立場のお方なので

コーネリアスが成長するまでは

彼が群れの指導者となるのでしょう。

 

 

☆ルカ

前作ではスポットがあまり当たりませんでしたが

ゴリラのこの方もいたはずですよね。

寡黙なゴリラさんがチームにいるとほっとします。

 

乗っているのが白馬だったので

とても悶えました、赤兎馬に乗る関羽さんか!

ノヴァとの交流は心温まるものでしたが

まさか退場してしまうとは……

いつでも弁慶の役を引き受けるゴリラさんよ(涙)

 

1作目でバックさんが退場してしまったのは

やはり惜しかったなあ……いい場面でしたけれど。

 

 

☆ブルーアイズ

2作目で見せた彼のゆらぎからの

父の力になると決意したあの場面が

本当に好きでお気に入りのキャラクターだったので

退場してしまってとても悲しかったです。

予兆はありましたけれどね……

 

でも別行動からの途中脱落だと思っていました。

そりゃ予告編の旅のカットに

いなかったけどさ、いなかったけどさ……(涙)

 

 

☆コーネリアス

前作からまだ2年しか経っていないので

本当におちびさんなシーザーの息子。

 

シーザーが妻子を失うと聞いた時

まさかまさか最初に脱落するの

コーネリアスくんか!?とあせりましたが

最後まで無事でした。よかったよかった。

 

ノヴァとたわむれているカットが

すばらしく美しい景色でした。

 

いつか彼は父親が誰なのかを知るでしょう。

まわりの皆さまがきっと語ってくれるでしょう。

父はまさに神話の人物であったのだったと。

 

 

☆レイク

パンフレットで奥様と紹介されていましたが

まだ恋人という印象でありました。

要所要所に見せ場がある可憐なお方。

 

ぶっちゃけシーザーの奥様の

コーネリアさんよりもずっと

印象的な女性になっていたと思います。

コーネリアさんは何故

ああなってしまったのか……

病気になっていたから仕方ないとはいえ。

 

 

☆バッド・エイプ

脚本を食いそうな(実際調整していたらしい)

とても愉快な新キャラクターでした。

重苦しい物語にコメディ担当がいると

とても落ちつくので

さじ加減が難しいのですよね。

 

彼には彼の物語があるのでしょうね……

ちょっと見てみたい気もするのです。

 

蔑称が親しみあふれる呼び名に変わるというのを

体現していたキャラクター。その逆もまたしかり。

 

 

☆ウィンター

「ドンキー」にはのろま・馬鹿という意味がありますが

あまり英語圏でメジャーな用法ではないらしく。

(もっぱらロバさんの意味ですよね。)

任天堂のドンキーコングはわりと意味不明な

響きの名前になるらしいというのは知っていたのですが。

 

今作では完全に差別用語として使われていて

聞くのも見るのも辛かった。

あれはまさに奴隷制度の隠喩ですね……

嫌いな存在を使役に使う心理は

きっと一生理解できないんだろうな……

私ならさっさと排除して終わるからな←

 

彼は明らかにアルビノ種なので

シーザーのホームメンバーに加わるまでに

色々辛いことがあったんじゃないかと思うと

最期が本当に切ないものです。

異端者は同族からも排除されがちなのですよ。

 

※ひと月以上、名前を「ホワイト」に

間違えたままにしておりました……

レッドさんとの対比が強すぎたとはいえ

ごめんなさい、ウィンターさん。

あなたの瞳の揺れはとても好きでした。※

 

 

☆レッド

コバさん派だったゴリラさんとのことで

ああ、そういう道もありうるのか

と鑑賞してから気づかされたキャラクター。

 

彼の惑いは最後の最後までわからなかったのが

また魅力的なキャラクターになっていたと思います。

 

今ついている人間側もまた排除される側であり

使役され、ドンキーと蔑まれ

名前を呼ばれることもない自分に

生きる意味はあるのかと

ずっと考えていたのでしょうか。

決断の場面は美しい雪景色でした。

 

 

☆プリーチャー

物語の冒頭にてスポットが当たったので

結構重要な役なのでは?と思った兵隊さん。

軍人さんなので、味方になってくれるとか

そんな甘っちょろい展開はなく

とても良かったです。

 

狙撃の名手という評価が

最後の最後に生きていて良い見せ場でした。

退場のカットもよかった……

そうですよ、ヘルメットで十分ですよ……

 

 

☆大佐

私は最初期の予告編だけ見て

その後の情報は遮断していたのですが。

彼の真の魅力のパートは

全て隠されていたんだなあ、と納得。

 

今までの悪役担当の人間たちは

猿への憎しみ、シーザーへの憎しみという

感情に支配されているタイプばかりでしたので

シーザーを「尊敬」している悪役というのは

とても新鮮でした。

 

「軍人さん」を丁寧に描いたキャラクターって

実は少なめなので、とても良かったです。

目指している、信じているものが

初めから全く違うだけのことなのです。

感情に揺さぶられるのは違うのです。

感情がないわけではないのですけれど。

 

シーザーに血も涙もない人間だと言われてからの

語りは見事の一言。この方の演技のほうが

評価される図式は結構浮かぶ……複雑……

 

ノヴァの人形を手に取った時点で

その後の運命を悟ってしまったので

最後まで落ちついて観ることができました。

 

あの感染力の強さならば

愛息子であろうと殺して生き延びるという

道を選ばざるを得ないでしょうね……

いつかは追いつかれそうな負け戦ではありますが。

 

軍人として生きてきた彼としては

病で自死せざるを得ないよりは

自分を憎む相手に殺されるほうが

望む未来だったのでしょうけれど。

 

シーザーがこれからも生きていくのには

大佐を殺す道はもう必要ないものだった。

1作目で手を下さず、2作目で手を下したシーザーが

最後に選んだ道がこれで本当に良かった。

 

もし殺してしまっていたらシーザーはもう

帰ってこられなくなっていたんだろうな。

なんだか『イティハーサ』の那智と青比古さんみたいですね。

 

確か一度目にした覚えがあるのですが

完成された作品中では何故

彼には名前がないのかをずっと考えています。

なんとなく浮かんではいるのですが。

 

 

☆ノヴァ

オリジナル作品の一作目に出ていた

ヒロイン担当の人間と名前が同じで

初期情報では同一人物と出ていましたが

完全に別人でしょうね~。

 

口がきけないとはいえ

宿る知性のまなざしが全く別でしたので

一緒にしたら失礼な気がします。

 

予告編の中での姿を見ていて

まるで赤ずきんちゃんや赤い靴の女の子みたいな

昔話に出てくる少女のようだと思っていたのですが

スタッフのイメージがまさにそれだったようです。

 

彼女の心が揺さぶられる場面に

共鳴してしまうことがとても多かったですね。

なので、前作の男の子のように

その位置変われという感想には

ならなかったかも(笑)

 

力のある子役さんはこういう物語に

登場させてほしい、とつくづく感じました。

 

2作目までを観ていて、このスタッフなら

大丈夫だろうと判断していましたが

彼女のそばにいつでも力強いエイプの皆さまがいて

危険地帯でも「安心」できるというのは

とても良かったですね。

 

「勇敢」のやりとりはとても微笑ましい。

「私はエイプ?」「お前はNovaだ」の

やりとりは本当に美しかったです。

 

音で言葉を話せなくとも

手話をたくさん覚えて

美しく成長していってほしい

そんな少女でした。

 

 

以下、あの世界の今後について。

オリジナル版には繋がらないだろうという解釈です。

 

 

☆☆☆☆☆

 

 

 

 

 

ノヴァは作中において童話に出てくる少女

つまり「Märchen」のイメージを与えられています。

幼さ故か、彼女生来の気質か定かではありませんが

彼女が物語の中で見せる真っ直ぐさ、純粋さ、勇気

そういった美徳に対しての評価です。

 

しかし彼女は同時に

彼女の持っていた人形に触れた大佐が

たった一晩で発症したことが示すように

強力なキャリアの持ち主でもある。

つまり災厄をもたらす「魔女」でもあるんですよね。

 

ルカとの交流は心温まるものでしたが

雪の中狂い咲いている花と少女という美しいカットは

彼女の正体(あの子の望みではありませんが)を

暗示しているようで、思い返すと少しぞっとしますね。

 

人類が人類であることを望む限り

ノヴァや他の魔女・悪魔たちは

人類と共に生きることはできない。

 

大佐の様子を見ていて

言語能力の退化=知能の退化ではなく

言語能力を失ったことに個体の精神が耐えられず

狂っていくのが正解のような気もしているのですが。

最初、ストレスによる精神病と診断されたように。

 

ノヴァのように話せないことが当たり前

そして生きていくのに支障はないと認識できるのであれば

精神が狂うほどの病ではない。

病と認識されることもなくなっていくでしょう。

 

そしてそんな魔女や悪魔が代を重ねていけば

彼らはもはや「ホモ・サピエンス」ではなく

新たなる種族となる。

「ホモ・サピエンス」は滅びますが

人の姿をした別の種族はこの地球で生きていく。

 

もしかすると成長したコーネリアスとノヴァが結ばれ

エイプでも人でもない、新しい種族が生まれる。

そんな未来もありうるのかもしれません。

 

いつかまたこの物語の続編が作られることが

あるかもしれませんが。

あの美しい景色が続くよう

やがてエイプも新人類も去っていこうとも

地球に生き物が栄えるよう

そんな未来がいつまでもあると願ってやみません。

 

……核戦争とかやめてくださいね。

もう見たくないですよ(汗)