『結界師』

 

田辺イエロウの作品、全35巻。

 

サンデーうぇぶりで無料配信なのを

読み返しまして、再購入なのです。

自分はサンデーが好きだな、と改めて思う。

ホーム感がたまらないという安心感よ。

 

完全版の企画も進んでいるようなので

絶対に買うのです!!

 

以下、感想です。

 

 

 

初連載作品というだけあって

序盤は描きなれていない感はありますが

(とはいえ、基礎画力は突出している)

「マンガ」としての構図や動きの魅力にあふれた作品で

やはり大好きだなあ……

 

イエロウさんは「虫好き」を公言している

女性作家さんなだけあって

とにかく「生き物」の絵がものすごく魅力的なのが

とてもとても素敵なのです(形容詞の語彙力不足)。

 

基本はあやかし退治のお話なので

おばけな生き物がたくさん出てくるのですが

もふもふもかさかさもぬるぬるもどこかしら

「かわいさ」が残っていて、すばらしい!!

生き物はこうでなくっちゃね!!

龍は特に豊作だと思います、私は地の光龍さんたちが好き。

 

時々変なことぬかすキャラクターたちも出てくるのですが

主人公の良守くんのスタンスが

「わけわかんないこと言う奴の話は聞かない」なので

とても快適ですし、結局怖いのは

「人間」のほうだったりするわけで。

 

女性陣に過剰付与された「女性らしさ」がない

という描き方もポイント高いです。

色気がない?そこが最高なんだぜ!!

(「狩り」モード時に出してくるお姉さんはいたしな、わかるぜ)

 

あとイエロウさん、ジブリや往年の特撮、相当好きですよね。

あれかな?これかな?というキャラクターが

出てくるのも楽しみでした……私は黒兜が好みかな。

 

☆☆☆

 

私が今まで読んだ物語の中でも

突出した「優しさ」を体現している

王道少年主人公である良守くんの

成長を追いかけていく物語。

 

第一話で明示された「誰よりも強くなる」

という目標から、さらに進んだ目標である

「烏森の封印」が提示された時。

 

彼一人では解決できるとは

とても思えないので、着地に至るまでに

「犠牲」が出るのではないだろうかと思い

その予感はある意味当たってしまうという

ビターエンドの物語でもあるわけですが。

 

「足りない」「欠けた」ひとたちの物語でも

あるのかなあ、と読み返して思ったのです。

そして向けられる目線はとても優しい。

 

主人公のキーパーソンになる

限くん、蒼司くんはもちろん。その最たる存在が

主人公の母親である、守美子さんで。

 

家族と離れて過ごす十年のうちに

その決意は強く深く固まってしまったので

自分の行為を「犠牲」とは考えず

本懐を遂げてしまうのですけれど。

 

「母さんは化け物じゃない」

「料理が下手でも考え方が変でも

いてくれるだけでいい」

「君は本当はとても傷ついているんだ」

「今でもわからないけれど、嬉しかった」

 

最後まで読み終えた後、このあたりの台詞が

とてもぐるぐるしてしまうのです。

 

おそらくは彼女の成長期に向けられてきた

隣人の「化け物」に値するような評価の数々を覆せるほどに

夫筆頭、子どもたちから「愛されている」ことを

彼女本人は最後まで自覚できなかったのかな……

 

結局「与えている」ものを自覚できないと

人間は満たされないので……

やっぱり何かしら欠けていようが

「人」と生まれた以上、「人」なんだよねえ……

 

あとメタ目線だと、物語の起点は

主人公たちの時代なので致し方ないとはいえですね。

 

全ての元凶・時守さんが

最愛の女性・月影さんが成仏する際に口走った

「お前をさらって、家族三人で暮らせばよかった」については。

 

そうだそうだ!おまえがそうしていれば

後世の誰も不幸にならなかったんだ!!と

茶々を入れてしまうのです。パラレル欲しいよね!