政治と農作物は
直結するんですよ……
以下、感想です。
第13巻「朝露の巻」
★第1章「山盗り〔二〕」
山での戦いに敗れた百姓たちが
川の流れで村に流れ着きます。
死体を目の前にし、脅しと共に
訴えることで庄屋はやっと動くのです。
そこへ馬にまたがった正助が到着し
戦いの状況を伝え、村人たちは
立ち上がるのであった!
銀山の役人は大砲を持ち出してまで
これを抑えようとするのだが
白旗を掲げた家老により打ち取られ
工夫たちは解放されるのでした。
しかし犠牲は大きく
正助の頼りであるゴンも行方不明となる中、
山の支配権を手に入れた
夢屋はほくそ笑むのであった。
★第2章「陣屋」
日置藩の改易・一揆の後の
復興は百姓たちにつかの間の
平和をもたらすも、
大きな支配勢力が不在となると
暴力集団が各地を荒らす……いつの世もそう!
城を訪れていた謎の人物は
集団の成敗に乗り出すのですが……
竜之進かな???
荒くれ者共は謎の人物を見ると
逃げ出すようになり、ついに
全面対決へと乗り出すのですが
苦しめられていた百姓たちの
対応のほうが早かった!
残されたのは頭のみとなり
謎の人物は容赦なく
切り捨てるのであったが
その正体を思い当たる正助たちです。
逃げ落ちた二人を倒したのは
カムイっぽいですね?
百姓と下人の境がなくなった
日置では、重労働の田起こしすらも
幸福に満ちているのであった。
あまりにも幸福なコマが続くので
だ、大丈夫なのだろうか……!?と
厳しい表情で城を見やる正助に
共感してしまうのですよ……
そして百姓みなが警戒する中、
新しい代官としてやってきたのは
一角と名乗るようになった竜之進
その人なのであった!!
綿の花が美しく咲き誇るのを見届け
もっと大きく、強くなるのだと
誓い合う百姓たちと新代官の
握手はすばらしい……
しかし!この幸福な時は続かぬのだと
暗躍する横目にコマは移り
作者の長い語りとなるのだった。
★第3章「共鳴り〔一〕」
スズメ駆除の光景が描かれますが
これだけいたら田畑が
えらいことになるぜえ~という
圧倒的な数がおりますね。
(現代は減少しているが)
百姓を見守る竜之進にわくわくの色が
隠せておりませんな(色男だしね)。
笹家・草加一門の墓は荒れ放題ですが
気にしない器量の大きさも見える。
アテナ、右近の二人も
日置藩に戻ってきたのですが
彼らはこの地で何をなすのであろうか。
★第4章「共鳴り〔二〕」
綿のとり入れ、市の復活、
稲の刈り入れ、すべてが幸福に
満ちた光景なのである……
そして竜之進の代官所での仕事ぶりも
公平にして見事といえる内容なのですが
今までのやり方に慣れてきている
支配者層はどう思うか?ですよね~。
竜之進の頼みもあり、アテナさんは
子どもたちの学問所を開いているのですね!
立派である……右近もくっついてるが。
祭りの歓声もにぎやかで
若い男女は森にしけこみ
幸福しかないように見える中でも
正助の苦悩は深いのであった……
新しい村の建築作業が進む中
(正助・ナナ夫婦の舅同士の仲の良さがうれしい!)
柱が崩れるという事故が起きますが
これは本当に事故なのか?
そしてナナの息子である一太郎を
助けに入ったなぞの笠の男は誰なのか?
……最近姿が見えないが、カムイかな??
代官所に集められた百姓代表たちは
日置藩が評価されていると知らされますが
本題は、豊かになった土地の年貢は上げられ
このおっかけっこが永遠に続くということですね。
そして百姓たちの集会に(禁じられてるのだ!)
竜之進も姿を見せ、隠し田封じへの
全面協力を惜しまないのですが
曲者にその話を聞かれてしまう!
その曲者は竜之進の読み通り
立派な方だ、と自身を慕ってきた
家臣・中島なのですが、竜之進は
己の正しいと信じるほうへ進むのみであった。
一方、村に探りを入れていた人物が
人別帳をつけていたこと、その裏に
横目がいたことにたどりつくキギスでありも
大事な人の生死を脅され、屈するしかないのだ。
中島はひとり抜け出し、竜之進が
出した書を家臣から奪うのですが、
百姓たちに追われ、到着した竜之進に
文字通り斬り捨てられるという後味の悪さよ。
★第5章「見分」
正助筆頭、日置藩の百姓たちは
自分たちだけが豊かになるのではなく
その知恵を、成果を他の藩へと広げていき
皆が幸福になっていくのでした。
その年の山の豊かさにもさらっと触れられますが
もう白オオカミカムイは登場しないのだろうか!?
クマがサケを捕っているのはよい場面だ。
赤子も生まれる中、元非人が
ひとり溺死体で発見されたり、
他の藩の代官との交流の中で
怪しい商売人の情報を得る竜之進であったり
嫌な予感が忍び寄ってくるのです。
土地の計測を進める怪しい一行を
取り囲む百姓たちですが、許可状を持つも
身分を明かさない彼らを前に
代官・竜之進が駆けつけてくれるのは
いいのです……先行きが不安すぎですが。
遅れて江戸の使者が到着し
代官所で告げられた内容に
根回ししていた件が潰されたと
愕然とする竜之進なのであった。
代官・庄屋・百姓一同で
談義している様は好きなのですが
話の内容は深刻で、まずは
百姓の代表たちが抗議するという
正助の案で皆が動き始めるのだった。
しかしこれが狙われていたらしく
頼りになる人物が竜之進含め
不在の中、見分が始められつつあり
あわや暴動という様相になってしまう。
正助に村を頼まれた若者組も止められず
絶体絶命という場面で、勇ましく
帰還の名乗りをあげるゴンなのであった!!
火薬の手配は忍びに間違いないが、誰……?
見分を妨害するというその一点にのみ
集中した、ゴンの指示による百姓の
行動は見事なものですが、そこへ
望月藩の兵隊が来たとの報が入る!
★第6章「突破クズシ」
見事な絵と達者な語りが一致している
作品は読んでいてストレスがないなあ……
侍と百姓の全面対決となってしまうのか?
という場面で、大自然に移ってしまうのです。
右近のアテナさんへの欲情は尽きないねえ……
いつまで腰巾着状態なのか?と読者も
見ていたところに「襲う」決意となるので
失敗しろ!!と思ってしまうのだ。
望月藩での密談、一鬼への仇討ち、と
場面が目まぐるしく変わりますが
どうつながっていくのか?というところで
密談を聞いていた鉄人と一鬼、
さらには一馬との斬り合いになるという構成よ。
★第7章「朝露」
アテナさんを襲うと決めた右近に対する語りが
「飢えた男」「求める獲物」と続くの
暴力を暴力とわかっている作家は
ええのう~と思考をあさってにしてしまう()
言い回しは丁寧ですが、私の心はあなたにない、
それでも抱きたいなら勝手にしろ、と宣言する
アテナさんの気高さが勝利するパートでした。
誰も彼女の誇りを奪えないのですよね……
そして場面は百姓と侍に戻り
あくまで幕府の使者の護衛に徹したい
望月藩の思惑と(自分の領地じゃないもんねえ)
ゴンの堂々たる訴えが交差する中、
使者の情報によって侍の動きは止まるのでした。
ゴンを助けてくれたのはカムイではなく
夢屋の部下として活躍してきた
市こと赤目のほうだった!
赤目がゴンに正体を明かし、己の
目を開かせてもらったとまで語る以上、
夢屋との決別は近い!わくわくする!!
一方、江戸で竜之進が告げられたのは
幕府見分の中止を喜んではいられない、
イタミ屋の商売独占と人別改めであった……
怒りに満ちた竜之進は
廊下で侍とぶつかってしまい
人斬りの苛烈さを見せられる読者です。
見分中止の報のみしか届いておらず
百姓たちはわきあがるのですが
戻ってきた竜之進はちょっと荒れており
(正助は気づいている節があるものの)
百姓との溝が少しずつ生まれていく……
領内の庄屋が一堂に集まり
人別改めの件を竜之進に問いただし
宗門改めを言いつけられた和尚も
真実を語るのですが、ここで「適当」に
したことが響いてくるのですよね~。
横目の仕事はすでに完成しており
庄屋筆頭、百姓・非人たちは従うしかないと
観念する中、竜之進は横目に戦いを挑むも
江戸で斬った侍一門に仇討ちを申し込まれる。
(仇討ちは「義務」なんですよね……)
武士社会のルールで謀られた竜之進は
一門の死体を見つけた百姓たちから
遠ざかり、朝露の中で夜を明かすのだった。
そして新しい春を迎えるのですが
子どもたちがおぼれる中、非人の子だけが死に(人影が見える…)
助けそこなった女が首を絞められ(また工作してる…)
怒り狂った百姓たちを止めようと
アテナさんがたちふさがりますが。
アテナさんが峰打ちで済まそうとするも
横目が横やりを入れているため
殺戮の場へと変わってしまうのでした。
彼女が死んでから乱入する右近だよ。
ところでカムイはどこにいるんでしょう?
作者にも姿を見せない、と宣言されてますし←