『ラビリンス/魔王の迷宮』

 

1986年制作、アメリカ映画。

監督、ジム・ヘンソン。

制作総指揮、ジョージ・ルーカス。

主人公サラ、ジェニファー・コネリー。

魔王ジャレス、デビッド・ボウイ。

 

『不思議の国のアリス』『オズの魔法使い』に代表される

少女が冒険を通して大人へと成長する物語。

主人公、魔王以外はほとんどマペットという

当時の最高峰特撮技術の集大成と思われる

冒険ミュージカル映画です。

 

見る機会がありまして今さら鑑賞しましたが

とっってもおもしろかったですv v

特に今は亡きデビッド・ボウイ演じる

魔王のキャラクター造形が興味深い。

 

映画を見終わったあと

「おもしろかった」「楽しかった」という

気持ち良さを味わい方

またちょっと変わった不思議な生き物たちが

ミニマムから超特大まで参戦しますので

「かわいい」ものが大好きな方にはおすすめです。

 

 

☆あらすじ

サラは物語の世界で遊ぶのが大好きな少女。

愛犬とごっこ遊びをして雷雨に遭ったその夜

継母と父に異母弟トビーの子守を任されうんざりしたサラは

「弟をどこかに連れ去って」と愛読書の呪文を唱えてしまう。

 

その願いを聞き届けたゴブリンの魔王ジャレスは

トビーを自分の支配する異世界へとさらう。

赤子の弟を返して欲しいと訴えるサラに対し

ジャレスは「13時間以内に迷宮を抜け自分の城までたどり着け」

という試練を与える。失敗すればトビーはゴブリンになってしまう。

そして彼女の迷宮での冒険が始まる──。

 

☆☆☆

 

あらすじを見てわかるようにものすごく王道です。

もちろん途中で仲間が加わります。お約束の裏切りもあります。

この手の物語に親しんでいる方にとっては

特にひねられた、そう来るか!という内容ではありません。

なじみのある展開を楽しめる方向けですね。

私は大好きですv v

 

この後の映画は徐々にマペットがメインではなくなるので

マペット技術としては最高峰にあたるのでしょうか?

多数の人々の手で命を吹き込まれたキャラクターたちは

作り物であって作り物ではありません。

 

背景美術が本当に美しいです。

きっと見るたびに新たな発見があるのでしょう。

エッシャーのだまし絵のセットは圧巻です。

リアリティのための照明も見事でした。

架空の世界に現実味を与える特撮はすばらしい!!

 

以下、キャラクターについてのお話。

魔王は最後になります。

 

☆☆☆

 

☆サラ

冒頭のごっこ遊びに噴きました。

英国王族風衣装の下がジーパン……

ちょっと待て!!

 

彼女とは趣味が合いそうだ……という

部屋の小物の数々。一般的乙女向けから

変かわいいも合わせて網羅されすぎです。

『かいじゅうたちのいるところ』もありました!

(調べてみたところ、かの方の別作品がほぼ原案?とか)

 

途中、弟の救出を忘れて紛れ込む

仮面舞踏会の衣装が本当にすばらしかったです!

美しい少女がそこにおりました……

とはいえ、脱出しますけれど。

 

この作品が気に入った理由に

彼女がさほど「ぐろい」試練に遭わないというところもあります。

幼い少女ならともかく、10代半ばともなりますと

どろっとした液体系比喩が多めになってきますので(滝汗)

まあ、間接比喩はありましたけれど。

彼女の一番最後の願いの言葉も好きです。

 

☆ホグル

迷宮の案内人のゴブリン。見事なマペット!

サラとの友情と魔王への忠誠に揺れ

忘却の桃を与える、「裏切り」担当役。

しかしなぜ桃だったのかは不思議です……

 

☆ルード

ゴブリンたちに虐待されていたところをサラが救助

はじめての友達となります。優しい大毛むくじゃら。

毛むくじゃらの方に悪い人はいない!!(持論)

岩を呼び寄せるフォース(違う)の持ち主。

色合いは、オランウータン系です。

 

☆サー・ディディモス

この世界の住人が恐れる、悪臭の沼の番人(?)

三銃士の世界から来たのかな?というような

古風なヨークシャー・テリア系の騎士さま。

サラのことを「姫君」ルードのことを「好敵手」と呼びます。

愛馬がどう見ても犬(そしてサラの愛犬にもそっくり)です。

 

☆おまけ(他の不思議生き物)

途中の芋虫さんのかわいさがドストライクなんですけど!

なぜかモブキャラであっさり退場(爆)

 

双子の門番、片方は正直、片方は嘘つき。

この時点で、あ!有名な謎かけきますね!!

と思って楽しめました。

 

落とし穴にたくさん生えている手が

さまざまな顔を作ってしゃべるのがおもしろかったです。

(動物影絵を作るときに手を組み合わせますよね?あんな感じです)

 

たくさん出てくるインディごっこの中でも

転がってくるメカ掃除機が一番おもしろかったです。

裏側でちゃんと操縦されているという。

 

これって歌うの?という頭がはずれる真っ赤な生き物たち

豪華絢爛ミュージカルを演じてくれました。

人間にも頭外しを要求するのは、怖いぞ。

 

『未来少年コナン』にこんなのいたよな……

というでっかい操作系メカも素敵でした。

主人公側で上手く操縦できればパーフェクトでしたね。

 

 

☆☆☆

 

 

☆魔王ジャレス

デビッド・ボウイ演ずる、美しいゴブリンの魔王。

観客の期待通り、歌います、踊ります。

水晶玉遊びが美しい……!!

 

もちろん劇中曲はボウイ提供。

キャラクター設計にボウイも関わっているとのことです。

 

物語はハッピーエンドで終わります。

皆が成長します。手を取り合います。

そして、魔王のことは誰が救うのだろう??

という謎が残ります。

 

最後にサラに与えられた試練

「正しい終わりの言葉を告げる」

それを邪魔するために

魔王がサラに与えた誘惑の言葉の数々。

あれは「愛」を餌としてぶらさげた「大人」が

子どもに向かって告げる、虐待の言葉です。

 

成長したサラは、仲間が必ずいてくれると信じてるサラは

虐待の言葉に惑わされませんでした。

おそらく魔王は、そのことをわかっていたと思います。

もう自分の魔力は通じない。言葉も通じない。

それでも、かつて自分に向けられた呪いの言葉を

告げずにはいられなかった……

 

物語の最後(一時的に?)力を失った魔王ジャレスは

フクロウの姿で、サラと仲間たちの様子を見届け

夜の闇に消えていきます……

 

もしこの物語に続きがあるとしたら。

『ピーターパン』の大人になったウェンディ視点にて

大人の姿になってしまった少年ピーターが自分を助ける

そんな物語が展開されるように思います。

 

もう一度自分を産み直して子ども時代をやり直して

そうして餌ではない、与える「愛」を得るのです。

その場合でも、きっかけとなった人物と

恋愛関係になる必要はないように思えますけれど……

 

魔王の物語をどう回収するのかが

ものすごく気になっている状態なので

サントラ買ったり自分なりに煮詰めたりしていくように思えます。

ああいう「少年」は、いいですねえ……

まだ戻れる位置におりますし。

……ボウイさん恐ろしい……

 

 

☆☆☆

 

 

☆特撮

この手の映画の醍醐味はやはりメイキング!!!

怪獣であれ恐竜であれ怪物であれ

クリーチャー系の集う映画であれば

必ずチェックするのがメイキングです。

 

この作品ではマペットメインですので

見える・見えない人形師さんたち大活躍!

アナログもデジタルも総動員です。

欲しい映像のために何が一番効果的なのか……

試行錯誤が素敵です。できあがった映像もすばらしい!

 

「作る」ということは本当に素敵なものだと思いました。

私も精進していきたいですね。