『なぜエヴァンズに頼まなかったのか?』

 

アガサ・クリスティーの作品。

 

男女バディで事件を解決していく

読みやすいほうのミステリなのです。

 

タイトル=ダイイングメッセージが

どういう意味を持つのか

開示されるのが鮮やか~!!

 

以下、感想です。

 

 

 

クリスティーによる主人公ボビイの外見描写、

ハンサムだとはお義理にもいえない顔だったが、

ひどく人好きがするのだ。(中略)

正直そうな人なつこさをたたえていた。、って

アガサ組では「安心」枠なのがよいですよね~!!

 

知り合いの医師とゴルフに興じていたところ

崖から足を踏み外した不幸な男を見つけ

「なぜエヴァンズに頼まなかったのか?」との

台詞から、ボビイの物語が始まるのであった~。

 

父との約束の時間がせまっている主人公は

応援を呼びに行っている医師を待てず

突然登場した男になきがらを見守るよう

託すのですが、この男があやしすぎる←

 

友人との約束で出かけた後

駆け込み乗車で一等室に紛れ込むと

幼なじみの伯爵令嬢と再会するのは

鮮やか~!幼少期は<お城の子>と

なかよしだったという表現も好き。

 

検死審問は死んだ男は事故死だと

結論付けるのですが、町会に

垣根や手すりの設置=再発防止策を要求するのは

いいな~、政治が機能してる~!と

思ってしまうのである。

 

亡くなった男の妹夫婦が主人公に

兄の死の間際について尋ねるのですが

何か探られている?と思ってしまうのは

ミステリー読者あるあるですね。

 

幼なじみであるフランキーが

妹を写真そっくりと語るのも

主人公が見た写真の女性について

謎が深まってしまうのだ~。

 

フランキーとちょっとした

けんか別れをしてしまい

もやもやを抱えているボビイは

(片恋フラグを察する読者!)

気分を晴らすためピクニックに

一人出かけますが、眠りこける

描写が意味深……大丈夫?死なない!?

 

場面はボビイを見舞いに向かう

愛車で爆走するフランキーに移りまして

主人公が致死量のモルヒネを盛られていたと

判明する!まじですか!!

 

そして二人は死んだ男にまつわる何かを

主人公は知ってしまった、だから

殺されかけたという推理を始めるのですが

それを裏付けるかのように、妹の

写真がすり替わっていたこと、

謎の男と鉢合わせたことに気づくのであった!!

 

死んだ男の正体は?(名乗り出た妹は偽物である)

鉢合わせた謎の男は何者?(不思議な名前は本名か)

エヴァンズとは誰?(重要な鍵であるのは間違いない)

などなど情報を整理し、二人の謎解きが

本格的に始まるのである~。

 

入院中のボビイに代わり探偵に乗り出す

フランキーですが、嘘をつくことで

真実を引き出す手腕はお見事である。

 

そして鉢合わせた謎の男(本名らしい?)の

ふところに飛び込むべく、医師を巻き込んで

交通事故を装うのだ、という作戦には

度肝を抜かれますわ~。ボビイは運転手や

オートバイ旅行者に化けてその土地に向かうという

すばらしい段取りも計画済みである。

 

フランキーの交通事故偽装は

見事に成功し(脳震盪の化粧もばっちり)

目的の男の家にかつぎこまれるのでした。

宗教的配慮が効果的に使われてますのう。

 

家の夫人と打ち解けた結果

不穏な情報を得つつある

フランキーですが、死んだ男を

突き落としたのは誰?という

謎は深まっていくのである。

 

渦中の男であるロジャーについに対面し

打ち解けるフランキーですが

彼に怪しいところはないと思い始めるのは

しろうと探偵の味わいですね~。

 

そして死んだ男がある人間に似ている、という

夫人の言葉をパーティーで引き出すことに

成功し、そのある男の名前が

謎解きのキーワードに浮上するのでした!

 

フランキーの「起こした」自動車事故を

怪しむ医者・ニコルソン博士は

事件にどう関わってくるのでしょうね……

 

ロンドンで待機するボビイは

謎の訪問者を「撒く」ことも忘れず

(映像化したらもりあがる場面だ!)

フランキーの運転手として登場します。

 

そして宿に滞在する夜、ニコルソン博士の

病院から抜け出してきた謎の女性と

遭遇するのですがその女性こそ

写真で見た女性だったのだ!

 

ここからあぶりだしとなります。

 

フランキーとボビイは無事合流し

お互いの情報をすりあわせますが

しろうと探偵の推理は頼りなく

情報をどんどん集めていくのです。

 

運転手としてふるまっているボビイの元に

写真の女性が訪れますが、彼女が

ニコルソン博士の若い妻であると判明する!

クリスティの描く男の「嫉妬」は本当に怖い。

 

博士の妻ことモイラを交え

それまでのいきさつを説明する

ボビイとフランキーですが(博士ではなく

遭遇したロジャーをあやしんでいたことなど)

モイラの直球発言は好きですね~!

 

フランキーはロジャーに直接

モイラの写真をどうしたのか?

尋ねますが、このやりとりの真偽は

どう事件にかかわるのでしょうね……

 

夫が麻薬中毒になってしまったと

受け止めた夫人はニコルソン博士の

病院に入れることに積極的になりますが

そこに博士の片思いの思惑もあるのか……

 

フランキーとロジャーは反対する中

突然、渦中の夫が拳銃自殺を

遂げてしまうという(読者は殺人を予測!)

事件から展開が一気に加速するのですよ~。

 

フランキーとボビイは拳銃自殺に

事件性はないかお互い推理をし

(マクベス夫人の引用はもしや?となる)

モイラを連れ出さなければならないと

話はまとまりますが、肝心の彼女は

どこかへ出かけてしまったらしく……どこへ?

 

亡くなった男の自称・妹夫婦の

足跡をたどるべく、ロンドンで

活動するフランキーですが

情報は集まらず……逆に自分の家の

顧問弁護士に疑われてしまうしまつであった!

(ボビイが偽者演じたのは事実なんですけどね)

 

フランキーの機転により顧問弁護士から

重要な情報を得ることができまして

読者も「信頼できる語り手」の情報は

助かる~となるのです。新たな名前の

人物たちはフランキーの読みで正解か?

 

一方、モイラの行方を探るボビイは

ニコルソン博士の家に忍び込もうと

木から落っこちたりするのですが

そこへ何者かが一撃を加えるのだった!

 

ボビイの行方が分からなくなったことで

冷静さを失いつつあるフランキーは

彼の筆跡の手紙で誘い出された場所で

クロロホルムをかがされてしまう!!

 

幸いフランキーが気絶した場所に

ボビイも監禁されており、二人は

情報をすりあわせることに成功しますが

そこに悪役のたちふるまいで登場する

ニコルソン博士である……偽者の!

 

絶体絶命の危機を救うのが

物語の冒頭にちょっとだけ

名前とどんな人物か触れられていた

ボビイとフランキーの幼なじみ、

バジャーというのが力技ですが上手いんだ~!

 

ニコルソン博士に化けて

暗躍していたロジャーを

三人がかりでとらえ、色々と

白状させるものの(博士は完全に無実なのだ!)

エヴァンズの謎はまだ解けていないのだった……

 

薬を打たれていたモイラの

救出には成功したものの

警察や医者を手配している間に

ロジャーには逃げられてしまうのである!

 

残った謎をすりあわせるボビイとフランキーでしたが

とある重要人物が遺言書の証人として

なぜメイドに頼まなかったのか?

という話から、メイド=エヴァンズの名前にたどりつきます。

 

ロジャーが変装の名人であったと

判明することから偽者として

遺言書を作成したことが

どんどんつながっていくのがすごい~。

 

そして部屋付きメイドであった

エヴァンズは見破る可能性が高く

証人として選ばれなかった上に

彼女は牧師館にいると判明、灯台下暗しですよ!

 

ずっと不幸な女性としてふるまっていた

モイラとの勝負にて証拠をつかみ

銃声というハプニングで決着となるのは

映像化に向いてますわね~!!

 

ロジャーは逃げおおせてしまったので

彼の手紙によって事件の全容が

語られるわけですが(クリスティー得意の手記!)

ボビイとフランキーもめでたく結ばれ

ハッピーエンドなのです。

 

キスシーンが目撃者の証言で

語られるの、作劇がすばらしいよね!!