『カムイ伝全集』第一部第9巻

 

中心キャラたちが青年期から

壮年期(には早いか?)に

差し掛かってきたからか

絵柄が変わってきた気がするのです。

 

以下、感想です。

 

 

 

第9巻「銀札くずれの巻」

★第1章「無人流」

暴れ牛をさっと切り殺す

謎の剣客の正体が気になりますが

ひづめを持つ生き物の迫力!

 

唐箕を発明したのは正助ではなく

吉とカブラという少年たちであるの

確実に次世代に勉強が実っているので

しみじみしてしまいますね。

 

死にそうな馬を診るために

動くのもまた少年であり

禁じられている乗馬がばれそうになっても

かわすのがお見事である~。

 

馬の症状はフンづまりと判明するので

助けるためにするあれこれが

動物のお医者さんで見たやつだ!とも

思うのでした。基本療法ではあるな。

 

豊かになった村で妹と川遊びをする

ゴンと集まるちびっこは幸福の象徴ですが

非人の掟が厳しくなったという

現実がそこにある、という一場面だ。

 

勉強会を取り仕切るゴンの姿は

ひとりひとりの力を認め、

よりよい社会を目指す一員として

立派ですが、正助と道が

違えることもありうるだろう……

 

蛍飛び交う夜、竜之進と一角は

元侍としての生きる道を語るも

こちらも道が分かれそうなのであった。

 

非人の男と百姓の娘のやりとりを

見てしまった正助は彼女を慰めますが

自分の妻である非人のナナのほうが

つらいはずだ、と語る強さを持つ男だ……

 

釣りに興ずる目付の息子・一馬は

暴れ牛を倒した剣客と邂逅し

こてんぱんにのされた状態で

屋敷に戻されてしまうのであった。

その正体は目付の弟・玄蕃であり

こちらも波乱の予感なのである。

 

玄蕃に城下を連れまわされ

芝居のケンカに巻き込まれた結果

すまき状態で行方不明になってしまうの、

馬鹿息子とはいえ一馬くんが

気の毒になってくるのだった……

 

カムイが居合を見守っていたということは

玄蕃にも何かあるのでしょうが

明らかになるのは先でしょうね。

 

 

★第2章「非常法」

すまきにされた一馬は

流れ着いた先で謎の男に

回収され、自給自足の環境に

放り出されるのですが

謎の男も何かあるのだろう……

 

藩内の政治駆け引きは続いており

剣客の戦いは相手を皆殺し

することで終わるんですね……

 

城代の用心棒たちの死体を

見つけたのはシブタレですが

目玉を宝石と勘違いするくだり……

うーん、血が少なければそうかも??

 

日置藩の財政危機が悪化する中

非常法を実施するか否かで

侍たちの意見も分かれますが

どのみち百姓に降りかかるのは

災いでしかない、と読者は学習しているのだ←

 

百姓の祭りのにぎわいについては

時代は違いますが、黒澤映画の

描写が印象深いな~。豊作は大事なので!!

 

祭りの輪に加わる竜之進と別れ

ひとり刀を振るう一角……

その時非人たちは訓練という名の

罰を受けていることに皆気づいてしまう。

 

非常法とは藩内のみで使用可能な

藩札発行が実施されることであり

貨幣経済圏からまず荒れていくことが

カムイの視点で断言されるのがつらい。

 

日照りに皆が苦しむ中

一角はとうとう仇討ちのために

江戸へ旅立ってしまうのでした。

 

雨ごいの儀が成功し大雨になる中

正体を見破られた竜之進は

絶体絶命のピンチとなり、

ヒョウによってワタは傷んでしまう。

 

 

★第3章「再会」

関所破りに挑む一角、

その行方は嵐のみが知る……

でっぷり太ったマムシが

いい動きなのだ~。

 

玄蕃との果し合いに

挑まざるを得なくなった

竜之進ですが、作者の

語りが重い……

 

苦戦する中、決着をつけたのは

竜之進ではなく小六に化けた

カムイであり、二人のやりとりもまた

竜之進の道を示すのであろう。

 

関所破りの報を聞き、

カムイの動きから犯人は一角と

気づく傷心のアテナさんよ……

 

そこにちょっかい出して

予想通り投げ飛ばされる右近は

すっかりギャグ担当になってるな。

タイトルの再会こっち!?とは思う。

 

 

★第4章「銀札くずれ」

ツクテと幸は逢瀬を重ねますが

密会が横目にばれてしまい

引き離されてしまうのであった。

 

堤を守るべくカニ取りに勤しむ

子どもたちは童組を組織したのだと

得意げですが、次世代が育ってると

泣いちゃうんですよ~!!

 

藩札発行の悪影響は商売上手の

夢屋が日置藩から手を引くと

宣言するまで及んでおり

正助たちの夢に影どころか

暗黒が訪れる予感である……

 

コマの谷間に挟まれる

カマキリやカメの絵が

生き生きしてるなあ(泣)

 

価格がなんと数日前の

数倍になっていく物価上昇の嵐に

町人の心は荒んでいくのだ……

 

商いを終え、故郷に帰ろうとする

商売人たちが藩札を「通貨」に

変えようとするのに対応しないの、

お、横暴……!!となる。

 

末端侍たちの生活は困窮し

家宝や太刀を質入れしても

お金は手に入らないため

腹きりが勃発。そして藩札

増刷……うーん、戦になりますな。

 

貨幣経済の苦境は当然

農民たちの生活にのしかかり

正助はまず代官所に訴えると

主張するも「一揆」の単語が

皆の脳裏に浮かび上がっているだろう。

 

玉手村では飢饉がすでに始まり

各地で打ちこわしが起こるのだ。

非人は鎮圧する側なのがしんどいのう。

 

飢えた一馬は米を奪うべく

ゴンの家で強盗を働くのですが

百姓も米など持っておらず

種もみを渡して時間を稼ぐうちに

百姓たちが集合するのだった!

 

 

★第5章「意図あり」

打ちこわしの鎮圧にあたるのは

非人であり、褒美として

町人ですら手に入らない

米俵が詰まれるので、支配者のための

差別政策はうまい仕組みである、と

白目になってしまうのです。

 

ツクテは見せしめのため

鼻と耳をそがれてしまい

幸さんの家に投げ込まれるの

こちらも気絶しそうである。

 

貨幣経済の悪化はとどめを知らず

ついには偽札事件まで

起こる始末である……

夢屋が裏にいるのはきついねえ。

 

百姓に囲まれ殺されそうになった

一馬の助けに入ったのは

竜之進であるが、まだ

気づかれてはいないのでしょうね。

 

城下の我が家にカサグレと共に

忍び込んだ一馬はなんと母が

玄蕃に襲われる場面に

出くわすのですけれど、

この事件が目付にばれることは

ないのだろうね……

 

オミネさんの墓の前で

自らの道を悩み続ける竜之進は

またしても剣客に襲われ

そろそろ決断の時が来るのでは?と

読者は思うのでした(いい加減悩みすぎだ)。

 

作物が豊かに実ったにも関わらず

「政治」のせいで生活に

苦しむ百姓たちは、ついに

一揆という手段に出るのだった!

 

というところで人為的に堤が

壊されてしまい、確認に訪れた正助は

横目たちに逮捕されてしまう!!

敵も先手を取ろうとするのだ……

 

それを聞いた竜之進は

馬を駆り、城に駆けつけ

名乗り上げるものの、その声は

激しい雨音にかきけされ

馬共々倒れてしまう……という

辛すぎる引きなのです。