天乃忍の作品、短編集。
デビュー直後の作品も
収録されているのですが
人と人との関係のやさしさの
描き方が一貫しているな~、
そのひとつとして「恋愛」があるのだ。
以下、感想です。
・『夏のかけら』
田舎の祖父の見舞いへ病院に訪れた少女と
長く患っており明るさを装っている少年の
ひと夏の「恋」のお話なんですが。
見たいもの・ほしいもの、といった「執着」が
《あなたとなら》あるんだという感情が丁寧に描かれていて
少女マンガ好きは読んでくれ、としか言えない
良さが天乃作品にはあるんですよね(ここまで一息)。
・『雪のかけら』
天乃さん曰くシリーズ化していますが
メインキャラは変わっているのです。
(描きおろしによれば、学校が同じ!)
よその女の子に恋をしている
男の子に視線を向け続けてしまうという
ある種の定番ポジションにいる主人公の
感情の変化が描かれておりますが
キャラ配置の妙で、新鮮さが出るんだな~。
・『恋のかけら』
前作の『雪のかけら』にて
「よその女の子」だったヒロインと
両想いになる主人公のお話ですが
ちゃんと最後に両想いになっている!(二回目)
というのも天乃さんは短編だと
片想いとか死別とかを得意としている()
作家さん、という自覚持ちの作り手なのでした。
・『春待ち草子』
童話作家の父を亡くした主人公が
物語のキャラクターたちと
記憶をたどっていくお話です。
言葉を、物語を、どこかの誰かに届くよう
紡ぐことを全力で肯定してくれる
あたたかい世界なのです。読むと毎回泣く。
・『秋色 君色』
日々、少女マンガを愛好し
恋に恋している主人公が
シチュエーション萌えから
恋情に突っ走るお話です。
……というように書き出すとひどいのですが
相手の男の子がちゃんと常識人なので
初期はストーカー扱いしてくれたりします。
きっかけはなんであれ(くだらないことであれ)
積み重ねたその関係に名づける気持ちは本物、
という表現が一貫している作家さんの
特徴が良く出ている作品です。ハッピーエンドだよ!