『書生葛木信二郎の日常』

 

倉田三ノ路の作品、全8巻。

 

王道から大きく外してはこない

良い意味で一般的な大正時代妖怪もの。

 

初期はこういう絵柄だったのか!という

新鮮さもありますが、最後はきっちり

まとめてくる作者さんのスタイルは

完成していたんだな~と思える良作でした。

 

以下、感想です。

 

 

 

時は大正、目に見えぬものたちが追いやられていく時代。

主人公が住まうことになったアパートの住人は

みな妖怪であり、「見える」主人公は

妖怪たちの巻き起こす騒動と共に

愉快な日々を過ごすのであった、という

典型的な巻き込まれ主人公のお話です。

 

謎の姉弟が起こす怪事件であったり、

行方知れずの兄含め、一族の因縁が

実はからんでいると判明したり、などなど

ほのぼのよりは、怪奇もの優先ではありました~。

 

とはいえ明らかに二十面相モチーフですよね!?という

闇の怪盗が実体化してしまうお話のオチが

「コメディ」となる、爆笑ストーリーの印象が強すぎる!!

 

物語の大きな山場で「悪役」となる

キーパーソンも、生きているうちに

なんとかなっていれば……という視線を向けつつも

寄り添うのは肉体をいじられても

愛を向けられる奥さんだけでいいっす、と私は思うのでした。

 

このまま進むと、関東大震災の時期に

お話がさしかかりますよね?という

不穏要素の積み上げもありますが

人も妖怪もそれでも生き抜いてきたし

エピローグが現代という、希望のお話なのでした。

 

主人公の相手役は妖怪たぬきお嬢さんだろうと

(兄の婚約相手が妖怪ということもあり)

読者は構えができるのですが「当て馬」姉弟が

ちと気の毒ではあったね……カルマくん不憫!!

 

掲載が青年誌ということもあり

「襲われる」女性の下着や裸体に対して

カメラがきっちり寄ってるな……

というため息要素はありますが、

現実女性から逸脱しない造形なので

サービスよりはえぐみ優先とは感じました。