『カムイ伝全集』第一部第7巻

 

新しい命がその生を祝福され

健やかに成長していくには

この世はかくも厳しい……

 

以下、感想です。

 

 

 

第7巻「雪どけの巻」

★第1章「剣風往来」

浅間山の噴火活動に伴う

異常気象がもたらした飢饉の描写に

始まりますが、川を流れる死体から

伐採された木材に移り行く光景が見事。

 

飢饉で親を失い、飢えた姉弟の前に

幻覚を見せる仙人が登場しますが

人情と商売のバランスが上手いな~。

 

金貸しと大名の駆け引きについては

結局権力者には「踏み倒す」という

選択があるのだ、という視点が

はっきりしている描写がよい。

 

商人側も連携し大名貸しを断り始めますが

火事を起こして証文を燃やしてしまえ、と

高笑いする家老が怖すぎる。

 

江戸城の老中たちの会談にて

語られる、日置藩には何かがあるという

秘密に近づくカムイと仙人(赤目)ですが

その秘密が語られるのはまだ先であろう。

 

仙人は日本橋にて、幻覚を見せた

姉弟と再会するのですが

迎えに行くことは……かなうのか?

 

剣客同士の戦いが続きますが

武士とは何か?という自問は

ぜいたくだね~と眺めてしまう。

 

圧政に対し立ち上がろうと決起する

集団もいるのだが、まず火事を起こして

江戸城に攻め入るぞ!という

作戦が気に入らね~!!

 

火事の混乱に乗じ、竜之進たちは

領主の館に押し入りますが

止めに入るカムイである!

 

この火事で日本橋も火の海となり

仙人を待っていた姉弟は

火にまかれて死んでしまうのであるが

その過程が容赦ない……

 

 

★第2章「謎」

前章で起こった明暦の大火という

未曽有の大災害のその後が

描かれておりますが

作者の権力批判は明確ですっきり!

 

カムイの姿で竜之進を救ったその後は

隼人の姿で情報をもたらすのであるが

竜之進たちは気づかないんだよな……

そこに駆け寄ってくるサエサである!

 

江戸が大変なことになる一方、

日置藩では開墾地に巨大な岩があることが

発覚し、火薬を使えないか?と悩む正助である……

 

ナナさんが懐妊しているとしった

小六さんがお祝いの気持ちを

表現してくれるの、いい場面だよな~。

昔を知っているとさびしいが。

 

火薬をなんとか調達しようとする

正助たちだが、そもそも禁制の品ばかり

ということで行商人もあがきます。

 

商売あがったりの側は

わいろを侍に贈ることで

商売敵を抹殺したりと

裏で色々動くのだった。

でもいい人の連帯は残るんだよ。

 

領主の屋敷からカメが逃げ出し

見つけた農民が食べてしまった!

から始まる、お亀様騒動が

まじで笑えない……

 

商人がからめ手を使って

使える人材を増やしたり

浪人の自分探しが続いたりしますが

百姓の苦しみを思えばのんきパートですね()

 

日置藩でも厳しい暮らしが続き

生まれた子をすぐに「お返し」しており

飢え死にするくらいなら・墓がある子はまし、と

言われる中、火付けの愚かさを知る竜之進たちであった。

 

産気づいたナナさんはそれでも

正助の子を産む覚悟を見せ

取り上げてやると語るカムイは

岩の爆破の件を知り、こっそりと

助太刀をするのであった。

 

「兄き」と呼びかけているの

いいですよね~。そしてナナさんは

独り、子を産み落とすのであった。

 

 

★第3章「雪どけ」

前巻にて夢屋に向けられた

打ちこわし騒動の詳細は

語られることなくここまで来ましたが

やっと場面が戻ったのだった。

 

カムイの身代わりで死んだ?と

思われたクシロが軸となり

起こされた騒動なのですが

左手首を失ってはいるんだよな……

 

早速役人が駆けつけ、首謀者が死刑と

なるのを、機転を利かせたキクさんにより

徒党を組んだ者たちは助かりますが

彼女は奉行所に引っ立てられる~。

 

捕まったキクさんを助けようと

動き出す面々でありますが

忍びがやたらとそろっているのは

なぜだろうね……

 

開墾に勤しむ正助たちだが

新たな堰をどう設計すれば

大雨でも田畑を守れるのか?と

頭を悩ませるのだった。治水は大事!!

 

様々な苦悩を抱え、それでも

堰の設計図を完成させた正助は

既存勢力に断られるという状態にしてから

新興商人である七兵衛に話を持ちかける~、

という戦術がお見事!!

 

新たな堰はついに完成し

工事に関わった老若男女は

身分の差に関係なく

喜びを分かち合うのだ……

 

厳しい雨の夜、堤に割れ目が

できていることに気づいてしまった

非人の少年・カムロは

自ら土嚢となることで守り切るという

悲劇から、ますます身分の垣根は

なくなったように思われますが。

 

それを快く思わない武士・商人たちの

暗躍で雲行きが怪しくなりますが、

何度でも協力しようと立ち上がる

人々がおり、怒りを向けるべきは

権力者であると語られるのです。

 

締めに久々?の忍びの戦いが

繰り広げられていますが

カムイの今後はどうなる!?