この巻の絵に見覚えがあるの
矢口高雄『9で割れ!!』に
引用されていたからですね~。
以下、感想です。
第5巻「夢の男の巻」
★第1章「カタタガエ」
でっぷりと肥えたカツオが
「うまそう」に見える
画力がえげつない……
しばらく赤目の逃亡生活に
スポットが当たるのですが
知恵を使って生きのびようとする
人々はみな「したたかに」強いのだ。
島抜けをきっかけに縁ができた三人は
江戸で暮らしていけるかと思いきや
こじき頭の采配にて竜之進たちの
身代わりになるものの、また別の
身分を確保するのが商売人の強さである。
カムイと遭遇した赤目は
死を覚悟するのですが
見逃されることで、カムイの
迷いを悟るのであった……
★第2章「夢の男」
竜之進たちを追撃する討伐隊に対し
忍びの術でひとり立ち向かう
カムイの技がさえわたっていますね~。
でも悲壮感のほうが強いな……
新キャラである用心棒・鏡ですが
あまりにつくりが整っているので
カムイの変装では!?と
読者が疑ってしまいそうだ~。
玉手村で一揆が起こり
助力を要請され、力になると返す正助、
それを追いかける苔丸と
熱い展開が続くのである~。
ナナさんはマユを世話しつつ
待つしかないのがしんどいね……
正助を表に出すわけにいかないと
包帯グルグル巻きで立ち上がる
苔丸はいい男だよ……!
一方、漁港ではこれまでの物語で
商才を発揮していた七兵衛の
輸送船が本格稼働するという
わくわくの展開なのですが
裏には百姓たちの苦難がある……
★第3章「つぼみ」
一揆のさなかとも知らず
剣客同士の決闘が始まりますが
いや~、姿勢の良さと体幹の強さと
太刀さばきの美しさが見事な絵です。
気絶している正助くんのカットから
過去回想が始まりますが
新しい作物のための肥やし集めでの
知恵が輝いている!非人村にかわやができたよ。
武助さんの凄惨な死は伏せられており
残された一家に負担がのしかかるわけですが
正助くんが声をかければ非人たちも
田畑の手入れをしてくれるのだ……
竜之進たちも食の重みを知る良いエピソードです。
正助くんの畑にめでたく芽が出て
文字を教えてくれた庄屋さんが何か
さずけたらしい?と読者も気づきますが
まだまだ先は長いのだ……
芽が育ち、葉の形がわかってきたところで
作者の語りによって正体が「ワタ」と
明かされるのは鮮やか~。育てるの大変。
そしてつぼんだところでまわりも正体を知るのだ。
いよいよ花が咲きそうであるという
同じ頃、カイコたちもマユづくりの
時期で大忙しとなりますが、苔丸の言葉で
ナナさんはワタの畑へと向かう。
夜明けと共に花が咲くのを見届けた
正助くんとナナさんがくちづけを交わす場面
朝の空気が見えるので、とても美しい……!
なぜかのぞき見してるカムイであった。
商人の元にワタの花を持ち込むも相手にされず
居合わせた商売人と遭遇する正助くんは
なんと小判数枚で買い取ってもらえたのだ!
た、大金じゃ――!!(投資と思えば安いけど!!!)
そして時間は一揆のさなかに戻りますが
武器を取って立ち上がるだけでなく
正確な情報を上の支配者に伝えるのも
大事な任務である……おどしも使うけど!
支配者には支配者同士の駆け引きがあり
すべて解決するわけではない、という
やるせなさはありますが、少しずつでも
一時後退しても、私たちは進むしかないのだ。
一揆の首謀者たちは犠牲となるものの
苔丸と正助くんは策もあり、逃げ切れるか?
というところで横目たちと戦いになってしまう……
★第4章「嵐のトエラ」
苔丸と正助くんの絶体絶命の危機に
(白土作品だと本当に死にそうになる!)
陰ながら助力した鏡ですが、これ完全に
カムイだよ……語りがすっとぼけてるの笑う。
命からがら村へ戻ってきた正助くんの元へ
倒れこんだ苔丸の存在で気づいた
仲間たちが駆けつけてくれるのだ~。
川べりで子どもたちのケンカが
始まり、正助くんとナナさんは
止めに入ろうとするのですが
待ったをかける鏡である、カムイだ!
ツムジとコダマという若い世代もまた
厳しい生にまみれることになるでしょうが
明るい未来に向かって突き進む良さがある。
鏡の変装を解いたカムイは
伊賀へ戻るのですが
そこで待ち受けていたのは
抜忍に対する制裁であった。
そして抜忍となった兄弟子トエラを
始末するよう命じられるカムイは
戦いの中で、この生き方で良いのか
疑いを抱き始めるのだ。
過去回想の幸福な修業時代が
とてもまぶしい。生きのびるための
術を互いに切磋琢磨していたのだ。
飯綱落としもここで生まれたのだね。
締めのエピソードとして
隠れ潜んでいた忍者を切り殺す
小六さん、それを見てしまった
正助くんが登場するのですが
誰かのなりすましであろうか?
私は小六さんが年貢として収めた米に
細工をされて、ひどい状態になって
嘆いている数コマを今でも思いだしてしまうので
何もかも「奪われて」気がくるってしまった
今のほうが幸福なのかも……と思ってしまう。