『パスカル・シティ』

 

新谷かおるの作品、全2巻。

 

NASA関係者の子どもたちを

取り上げた「ジュブナイルSF」です。

なので、やるのか!その展開を!!を

堂々と繰り広げるのであった~。

 

新谷作品あるあるなんですが

内容が良すぎて電子版入手後に

紙の本を買ってしまった(爆)

 

以下、感想です。

 

 

 

宇宙飛行士として活躍する父親に対し

特別ではなく「日常」なんだ、と語る主人公たちは

ローラースケートの大会で優勝するのが

物語冒頭では優先事項となっております。

 

この、ローラースケートの表現が

戦場やモータースポーツもので

作者が得意としている方向性とはいえ、

遠心力と重心と加速の表現がすげえ!!

 

デフォルメ効いた絵柄であっても

体のどこに力を入れるとその動きが

成立するのかをばっちりとらえてるの、

子ども時代は《マンガ家はみんな描ける》と

思っていたものですが、絵が上手くないと

描けないんですよね~。

 

なるほど、少年たちの「日常」と

NASAチームの「非日常」(大人はまだね)を

交錯させるストーリーなんだな、と

構えていると、父親たちの事故が発生し

様相が変わるのでありました。

 

プロの皆さんがそれぞれの役割を果たし

宇宙事故からパイロットたちを救うお話

なのですね、と読み進めていくと

作戦がなんと失敗してしまうので

子どもたちは自ら動き出すのだった!!

 

自ら動き出す=NASAの船をぶんどって()

宇宙空間に父親たちを助けに行く、なのが

フィクションには思い切りが必要だ!!を

全力で遂行していて、一生ついていきますぜと

思わざるを得ないのであった。

 

主人公たちの救助チームには当たり前に

有色人種がいるし(そもそも主人公が日系だ)

長年の友人から、大会で知り合ったばかりの

知人もいるし(頼りにもなるし不安にもなる)

新谷作品なので当然女性「たち」もいる、というバランスの良さ。

 

してやられたNASAの皆さんも、子どもである

彼らの能力を適切に評価している、という裏付けにて

そんなばかな展開も難なくクリアしているのが

フィクションとして強いですね~。ここに至るまでに

キャラが立っているのも大きいですが。

 

絶体絶命のピンチを挟みつつ

見事父親たちの救助を成し遂げた

(ド派手な爆発もあるよ!!)

主人公たちの未来は輝かしいですね~。

 

物語の舞台は80年代後半となりますが

彼らが立派に成長した二十一世紀には

火星移動も「日常」になっているという

エピローグでして、この当時の日本には

未来を明るく照らす「力」にあふれていたな、と

感慨深くもなるのでした。