『シリーズ1/1000sec.』

 

新谷かおるの作品、全2巻。

 

CGソフトで修正が容易になる前の

カメラマンたちのお話ということで

技術的に古い描写が多いのですが、

昭和ハラスメントもなかなか強烈~。

(男性側に暴言の自覚があるだけましか……?)

 

この作品に登場する台詞が

幼少期から残り続けているという点で

新谷かおる作品で一番鮮烈だったりします。

 

同時収録の短編が変わっているので

一緒に文章書いてしまうのだ~。

少女マンガが!なくなってる!!

毛糸の腹巻きの傑作コメディが……

 

以下、感想です。

 

 

 

★中編

母の入院・記憶後退をきっかけに

カメラマンのバイトを始めた主人公が

亡き報道カメラマンの父とは別の

カメラマンの生き方を選び取るお話です。

 

この頃の絵は師匠である松本零士の影響が

とても強いのですが、新谷さんの

思想はすでに明確に描写されてるんだよな~。

 

この一連エピソードの中では

バイトの身でカメラを購入した主人公に

趣味ならともかく商売なら筆を選べと諭す

社長さんの台詞が残っているのです。

 

「ピアニストが四畳半一間に

 グランド・ピアノを

 ぶち込んでその上に

 布団引いて寝てたって

 そりゃぜいたくとはいわん

 (中略)そのかわりプロなら

 それでモトを取りかえせ!!」

 

 

★短編連作

この中では『ウェディング・シャッター』と

『勝手にシンセサイザー』が好きです。

全体的にそうだけど、どちらも思想が強い(ほめてる)

 

「システムは同じだけど

 社会的に一単位としては

 認めてくれんでしょ

 (中略)相互の理解が

 あってこそ成り立つ

 共同生活です」

――『ウェディング・シャッター』

 

「どの世界でもそうだが

 体力のない人間から

 脱落するわけだが」

「日本の教育では

 若いときの体力づくりは

 あまり力を入れない」

「そのくせ社会に

 出てから一番要求

 されるのはそれなのに」

――『勝手にシンセサイザー』

 

ところで♂♀の合体にてセックスを表現するのって

有名どころでは『ルパン三世』が使ってましたが

(絵が上手すぎて継承されなかったのかな……)

新谷さんも記号だけなら使ってたね~。

 

 

★短編『コブラ11』

作者お得意の最前線戦記ものですが

ベトナム戦争に参加した

日系アメリカ人が主人公っぽい……

 

現地の村娘との淡いロマンスがある~と

見せかけ、彼女はがっつり軍の関係者なので

主人公に脱出路を教えた裏切り者として

処刑されてしまうのだった。

 

 

★短編『学園三冠王』

どたばた劇のままオチがつく

にぎやかな作品でした。掲載誌どこでしょう?

 

三人組のうち、置屋育ちの美青年に対し

おかま・変態といったワードが

飛び交うのに昭和を感じてしまいますが、

ヒロインが当初父と芸者の再婚を嫌がる姿もあり

そのままの彼を受け入れているのは寛容とも言える。

 

 

★短編『クラッシュUSA』

作者お得意の女仕事人

(この表現でいいのか?)のお話だ~!

すでにハイヒールをはいた美脚の

デフォルメ表現が完成されている……

 

フィクションには思い切りが必要だ!!

という大原則を貫ける作家さんが好きである。