『嘘解きレトリック』

 

都戸利津の作品、全10巻。

 

以前から気になっておりましたが

ドラマ化をきっかけに

読みました~(ドラマはノータッチ)。

 

以下、感想です。

 

 

 

幼い頃から「嘘」が聞こえたことで苦労を重ね

生まれ育った村を出た鹿乃子ちゃんと

万年貧乏探偵の左右馬さんが相棒関係となり

嘘で始まる謎を解決していく昭和浪漫ミステリーです。

 

鹿乃子ちゃんが、耳に響く音で見抜く嘘は

あくまでも話者の自己認識に頼るものであって

(当人が嘘と認識していなければ「嘘」判定にならない)

万物の正しさを見抜くものではないという設定の妙もあり、

「なぜ」人はウソをつくのかといった事情も解いた上で

どう選択するのかを促す、優しい探偵たちのお話なのでした。

 

中盤に登場する謎の詐欺師・史郎さんについても

これをきっかけにおどろおどろしい事件要素が

ちょっと増えるのか?と構える読者でしたが

そうならなかったのも良かったですね。

 

この史郎さんが「かつて」鹿乃子ちゃんと同じように

ウソが聞こえる能力を持っていたと知ることで

鹿乃子ちゃんから探偵である「先生」への

気持ちが大きく動くことになりますが

《助手ではない》という恋愛心に振れつつあると

気づいた事件での、キーパーソンの描き方がよかったですね~。

仮に異性愛だとしても身分違い、それはそう……

 

しかし子どもの史郎さんを詐欺の「道具」として使った

悪役・武上さんが、悪事をちゃんと自分で引き受ける

道具を良い意味で道具扱いに徹するお方だったので

もしかして史郎さんがぼんやりとした子どもではなかったなら

(悪役向きの賢しさを身に着けるといった変化があったなら←)

ずっと一緒にいる未来もあったかもしれんなあ……

とパラレル妄想が始まるのでした(爆)

 

掲載誌の廃刊に合わせた円満終了といいますか

終了するまでの話数を逆算した上で最終盤に

気になっていたお話が盛り込まれており

もっと続いてほしかった気持ちもあるけど

これでよかったんだろうねえ、と思える

ある意味では幸福な完結ですね~!!

 

互いが互いにとって大切な存在である、と

成長していった二人なので

「その後」は語られることがありませんが

どんな関係性に落ち着いてもきっと

大丈夫なんだろうな~と思えるのでした。

 

丁寧な作画が好印象な作家さんでしたので

他の作品も読んでみるのだ~。