『ふしぎ遊戯 玄武開伝』

 

渡瀬悠宇の作品、全12巻。

 

『ふしぎ遊戯』の中で断片のみ語られた

玄武の巫女・奥田多喜子の物語です。

 

白虎の完結を楽しみにしているところですが、

本の世界での冒険の中で主人公が得た

出会い、想い、その選択の先も含めて

玄武が最高傑作と信じて疑わないのでした〜。

 

以下、感想です。

 

 

 

時は大正、母の療養のため盛岡に越してばかりの

主人公・多喜子は、愛する母が亡くなった夜

めったに家に帰ることはない小説家の父との

衝突をきっかけに、願いの叶う本と知らずに

父が訳した「四神天地書」を開いてしまう。

 

初回から、主人公が才色兼備のはいからさんで

いけずにも理不尽にも堂々と立ち向かう力を備えた

「強い」女性であること、それと同時に己を

必要としてくれる人は「ここ」にいない、という

孤独を抱えている少女であることの描写が鮮やか〜。

 

初恋の相手であり、後に白虎の巫女となる

鈴乃ちゃんの父と現在はなっている男性に

「君は強い女の子」と言ってなぐさめられるの

ひっで――!!と正直思ったんですわ。

 

現実世界に居場所がないと異世界に逃げ込んだ

主人公が、今ここでできることをするのだ、と

宿命を受け入れ立ち向かおうとする場面が

一巻でまとまるのはとても良い!

 

《異界の巫女がこの世界に現れたのは初めて》

ということもあり、滅びの予言とセットだったため

一筋縄ではいかない七星士集めや

恋の相手の特殊事情、自国・敵国の思惑が

もつれ合う展開で進んでいくので

どう終結に向かうのだろう、と思われましたが

連載再開後の三巻分のお話はあっという間だった〜。

(駆け足だったけど、もっと読みたいぐらいが丁度良い!)

 

「悲劇」と語られる事実と真実の

交差する瞬間の描き方が見事だったので

どうしてその選択を!?と思いつつも

こうするのがきっと良かったんだろうな……と

満足して逝く人々の姿に涙するのでした。

 

真に民を思い国のために立つ皇帝・女宿と、

玄武に喰われるとしても病となり限りあるこの命で

この国の人々の幸福を守りたいと願った巫女・多喜子との

幸福な再会を国中が祈り届けるのも当然のことだろう……

 

最終的に異世界でその生を全うすると決めた多喜子ですが

初恋の終わり、巫女の定めを知ってしまった七星士たちの拒絶の後

求婚を受け入れる、あたりの現実世界のキーパーソンたちが

白虎の物語につながっているんですよね〜。

 

神獣に喰われないためには強い心云々については

そもそも多喜子が弱っている状態だったのと

喰われることへの覚悟が決まりすぎていたのが

大きかったんだろう……と思うのです。

 

七星士のバランスも良くて(虚宿と斗宿なつかしい!)

過去に苦労した、大人の女性の余裕を備えた牛宿と

多喜子に感化されて強くなった室宿も好きですが

壁宿が大好きです、いつもそばにいて

巫女を守り続けたMVPは君だ!!