『カムイ伝全集』第一部第3巻

 

週一ペースになりつつありますが

作品の重みを考えればそれで良いのだろう。

 

以下、感想です。

 

 

 

第3巻「玉手騒動の巻」

★第1章「片目」

草加一門の「裏切り者」十兵衛と

一角が再会し、逃げ延びた竜之進の

力になると誓い合い、一角は去っていきます。

侍同士の化かしあいも大変なのだ。

 

抜け道から逃亡をはかる一角も

非人頭・横目に追いつめられますが

そこに忍びの横やりが入るのであった。

人々の思惑が判明するのはまだ先である。

 

白オオカミと片目オオカミの邂逅にて

中断されていたオオカミ物語が

再開して私はうれしい!野生動物には

厳しい生の物語だけど「自然」は平等なので!!

 

大穴に落ちた白オオカミに

片目オオカミが獲物を分け与えたり、

白オオカミを捕まえようとした猟師の

手によって脱出が成功したり、

非人の里で家畜を捕まえたりと、

つかのまの平和なパートとなります(平和とは??)

 

 

★第2章「のろし」

読み書きを習っていたとばれた

正助くんが庄屋に拷問されますが

それを馬小屋でしているので

繊細な馬たちが怖がっているの

生き物を描ける作家の描写ですわ……!

 

父親が責め立てられているのを見て

口を開いた正助くんが、自白ではなく

「交渉」を開始するの、教育を受けた

光の少年だ……と感動してしまうのです。

庄屋の不正を見抜いた彼はこう語るのであった。

 

正助「その時、おらわかっただ。

 なぜ百姓が読み書きを習ってなんねえか……。」

 「字が読めなければ、めなしも同じじゃ。」

 

密告をする百姓をとっちめた際に

正助の母が非人であったと

息子にばれてしまうのですが

なぜ隠したのか?非人も下人も関係ないと

言い切る正助くんは作品の光だよ……

 

魚とりにて非人と百姓の子ども同士が

衝突した際、こっそり非人たちを助けてくれる正助、

よその村の百姓の子どもたちと戦いが始まり

知恵と勇気で勝利をもぎとる正助、

タイトル実は正助伝なのでは???と思い始める←

 

そうやって光を放ち始めた正助くんに

村の女たちも色めき立つわけですが

彼は悲惨な死を迎えたオミネさんが

ずっと好きなので、誘惑にも屈さず安心です←

 

急な増水を見事な治水策で対応したり

かつて助けた非人たちが仲間になってくれたり

歴史の流れより早くセンバコキを発明したり

(さすがにこれはフィクションとの語りが入る)

やはりタイトル正助伝なのでは!!??と読者は思う。

 

しかし白オオカミもカムイと呼ばれることで

この作品のタイトルは『カムイ伝』なのだと

引き戻されるのでありました~。

 

 

★第3章「玉手騒動」

前章の終わりで集団男子に襲われていた

サエサを助けようとする正助くんですが

暴力にはかなわず、サエサも刃物で精一杯抵抗するが

結局相手が逃げていったのは非人とはいえ

権力者の娘だったから、というつらい事件がさらっと出ます()

 

よその百姓の子たちとの小競り合いも

正助くんの知恵で勝てると思いきや

蚕で生計を立てている新キャラの少年が

ヨモギがたかれたことでクワが傷んでしまったと

知将である正助くんに「礼」をするのですが

これは正当な抗議なんですよねえ……

 

そんな中で正助くんはマムシにかまれてしまいますが

新キャラが虫歯であることから毒を吸ってもらうのを断り

(虫歯からマムシの毒が回って死んでしまうため!)

玉手村の苔丸となのるその少年と友情が芽生えそうですが

大丈夫か!?すぐに死んだりしないのか!!??←

 

正助くんを軸に子どもたちは勉強会を始め

その熱意は大人たちにも広がり、庄屋による

年貢の割り付けは正しく行われているのか?と

監視役である百姓代に押しかけて確認するのであるが

結局、弱い人から死んでしまうのだ……

 

玉手村の養蚕を学ぶためという口実で

庄屋の息子が同行しているとはいえ

正助くんは村を追い出されてしまうのですが

そのタイミングで一揆が起こるの

物語の舵取りがうまいなあ……!!

 

首謀者は苔丸であり、正助くんも

一揆の攻撃にその知恵で

助力する一幕がありますが

結局はつかまってしまうのだ……

非人が一揆の取り押さえに参加するの

そういう制度設計とはいえやるせないですね。

 

苔丸は捕まる前に自ら顔を切り刻んで

拷問にも耐え抜くのですが

自白しなかったために「非人」とされ

生き延びることになります。死ななかった!

 

途中に登場した謎の侍は

竜之進と判明しますが

彼の世話になっている道場には

カムイもいたのだ、集まりますね~。

 

 

★第4章「ボテフリ」

非人の里で生きねばならなくなった

苔丸もその運命を受け入れつつある中で

かつての仲間の処刑執行人になるのは

辛い話だ……そして正助くんは正体を見抜いた!

 

非人の村を訪れる正助くんに

今は「無念」と名乗り生き延びることに徹している

苔丸もその正体を明かし、たびたび助け合っている

カムイの姉・ナナさんも交え

養蚕を開始するの、希望パートですねえ……

 

クワをもりもりと食べ続ける

蚕の咀嚼音(?)をいい音と感じる一方

人間もこんなに食えたら、と語るみなが切ないね~。