少女クラブ版『火の鳥』

 

手塚治虫の作品。

ギリシャ・ローマ編として有名でしょうか。

私の中ではエジプト・ギリシャ編なのですけど(笑)

 

里中満智子『海のオーロラ』を読んでいて

読み返したくなったので再読。

文庫版はカラーページがすごくきれいですv v

 

以下、感想です。

 

※19.07.05に加筆・修正※

 

 

 

この物語での火の鳥は、天界から逃げ出した不死鳥。

生き血を飲んだ男女が死んでもよみがえり

何度も出逢う物語です。ちなみに生前の記憶はなくなるよう。

 

カラーページがとにかくきれい。色彩がいいですよね~。

あとこの頃の手塚さんは全コマ映画のような感じですね。

そのままの構図でアニメーションや実写で動かしたいような

ロングショットが多く、ページが小さいと細かい……

 

 

★エジプト編

奴隷の娘ダイア(元は王女)と王子の物語。

ダイアは動物たちもききほれるほどの歌声の持ち主。

王子は愛する父親のため、火の鳥を求め旅に出ます。

 

彼女の歌声を利用し王子は火の鳥を捕らえようとしたりもしますが

次第に二人はひかれあい、王子が王に即位するとき結婚します。

火の鳥は卵を助けてもらったお礼に、二人に生き血を与えます。

 

父親の王は若い王妃の計略で殺されます。

義理の母だし、姉ぐらいしか年が違わないなどと言って

王の死後は王子に結婚を迫ったりもします。戯曲の女性っぽい。

 

火の鳥はすでにデザインが完成してますね。

まだかわいい感じは残っていますが、美女です。

卵からかえったひな鳥には、チロルという名がついています。

 

 

★ギリシャ編

これはトロヤ戦争を題材にしているので、一番スペクタクル!

男性もいっぱい出てきて楽しいです。

 

死後ナイル川に流されはなればなれとなった二人。

ダイアはヘクターの乗るトロヤの船に救われ

王子はスパルタの海岸に流れ着き、ユリシーズの部下となります。

 

そしてスパルタ王の宮殿で再会。敵国同士ながら一気に親しくなります。

ダイアとクラブ(王子にここで名前がつく)は

台詞上は兄妹のような結びつきとなっているのですが

やっていることは恋人同士ですね。

 

ただ当時はまだ男女の恋愛物ってタブーだったようで

メルヘンみたいな恋愛なら許されるけど

恋人同士のあれこれも色々ごまかさないとまずかったらしい。

 

でもマンガを読む女の子は恋愛もの好きだから

兄妹の単語は無視して(笑)二人は恋人同士なんだ、と思っていたはず。

満智子さんの文章読んで、やっぱりそうですよね!と思いました。

 

せっかくだからトロヤ戦争の関係者についてもコメントを。

ヘクターは最初はかっこいいなぁ、と思うのですけど

途中からあれ?という風になります。

おそらくこれは、手塚さんの描く二大スター

ケン一くんとロックの違いでしょうね。

クラブはケン一くんですが、ヘクターはロックです。

 

一例を挙げると、ダイアがさらわれたときの対応が違う。

クラブはとにかく助けに行く。すぐそばにいて守ろうとする。

しかしヘクターはスパルタ王の娘ヘレナをさらって

ダイアと宝とひきかえだと脅迫する。

……この差がかなり影響するんでしょうな。

 

パリスくんはかわいい。ヘクターの連れてきたヘレナにひとめぼれ?

ぼくは死にたくない、などというところは原典に近いですね。

火の鳥を求めるパリスと共にヘレナは行動したりして

なかよしとなります。

 

大人なのはユリシーズかな、やはり。

敵国人ダイアを守ろうとするクラブに対し

その女がいるときさまはこしぬけだ、女を殺せなどと

のたまいます。部下として期待をかけていたからでしょうが。

共に死んだ二人を最後には弔ってやります。

 

 

★ローマ編

この話が一番地味かな~。

ダイアとクラブが一緒に育った兄妹になっちゃうのが残念。

ほんわかしていてかわいいんですけどね~。

 

ただ手塚さんのネームセンスは抜群ですよね。

ローマの人物名、オキロ大帝とネボケタス王子ですよ。

闘技場のくだりなどは、ライオンがいっぱい出てきて楽しいです。

あと火の鳥・チロルちゃんが美女に成長してますね。