『殺人は容易だ』

 

アガサ・クリスティーの作品。

 

バトル警視ものなんですが

彼が登場するのは本当に最後の部分のみで、

クリスティー作品の中では

「しろうと」探偵にあたる主人公を

軸として進んでいくのがカギである。

 

冒頭に登場するおばあさまの台詞が

そのままタイトルになっており

とても!すばらしい!!

 

以下、感想です。

 

 

 

自分の暮らす村でひぞかに連続殺人が起きている、

次に殺される人も、犯人もわかってしまったので

これから私はロンドン警視庁に向かうのだ、と

語るおばあさまと偶然乗り合わせた主人公の元警察官。

 

彼女の交通事故に続き、次に殺されると

名指しされていた人物が死亡したことを知り

その村で何が起きているのか調べに行く

という百点満点の冒頭部分なのです!

(証拠がないため、初手で警察に行かない)

 

知人に紹介してもらった「いとこ」を起点に

怪しげな民間伝承を調べる物書きという

設定で田舎町にやってきた主人公は

鮮やかにいとこ=ヒロインと邂逅するのであった。

 

亡くなったおばあさまが名をあげた人物は

確かに一見事故死のように思える、と

色々な人物の話を聞いて調べる主人公。

案内する中で核心を突き、協力者となるヒロイン。

 

極論に対し、誠実にさとす対応をとる人物が

「医師」といった共同体の要となる職業に就いてるの

大戦を「生き延びた人」によって

構成されている、社会の成熟を感じるな~。

 

主人公がヒロインに恋心を「ぶちまける」くだりは

ちょっと笑ってしまうのであった。

正直すぎる!恋に浮かれるとはそういうものですが。

 

ちょうど物語の半ばというあたりで

主人公が単なる作家ではなく

事故を調べにきた警察官だと

ひとりずつばらしてしまうのですが……

 

ここからあぶりだしとなります。

 

主人公のやけくそ告白を受け

地元の名士と年の差結婚をする予定

であったヒロインは考えを変える!という

メロドラマとしては劇的展開を迎えますが

犯人にあたりがついた場面にて

主人公も読者もひやっとするのであった~!!

 

問題の地元の名士とかつて婚約していた

老婦人が婚約破棄をした理由

=ペットの小鳥を握りつぶされたから

と語る一幕も続くのですが

その過去の一連の場面を読んだ時に

怖い~!!と思ってしまうのです。

 

そしてクリスティーはミステリの名手なので

そこからまた転がされるのです!

「本当の犯人」に読者が

勘づいてしまう演出がまじで怖い。

 

フィクションにおける復讐犯の

執念さ、別方向では見習ったほうが

いいかもしれん()と偶然を装いながら

《犯人に追い込みたい人物に

嫌な思いをさせた人々を次々と殺していく》

くだりにはうならされますわ~。

 

ペットの小鳥を握りつぶしたのは

地元の名士ではなく、老婦人のほうであったと

主人公ではなくヒロインが知って

罠にかけようとするの、助かるとはいえ

こちらも焦りながら読むこととなります。

 

最後にちょろっと登場するバトル警視は

犯人像に心あたりがついていて

さすがの一言ですね。もっと出番欲しかった!