幸村アルトの作品、全21巻。
正確には本編と続編があるのですが
その続編も1巻だけなので
カウントに入れてしまう~。
ギリシャ神話題材のお話ですが
作者の「倫理観」がしっかりしているので
要所要所で安心して読める作品です。
しかし少女マンガ界で冥府の王・ハデスの
ヒーロー担当ぶりはぶっちぎりだな、
いつか一覧にしてみたい!
以下、感想です。
ひとり診療所を切り盛りする
薬師の少女・コレット。
あまりの激務状態にやってられっか――!!と
井戸に身投げしたその先で出会った
冥府の王・ハデスの薬師となる読切、が
好評につき長期連載となったパターン。
ギリシャ神話モチーフにつき
冥府関係者、死者だけではなく
神々・英雄がどんどん登場しますが
あくまでも「モチーフ」であり
薬学の基礎となる「科学」を土台に生きていく
現世の人間たちが主軸のお話で
読み心地の快適さは「現代」人間賛歌作品です。
時代をちょっと古風に設定しているとはいえ
現代日本でもぶつかりがちな「善意の壁」を
全否定することなく、キャラクターたちが
自由を勝ち取っていく爽快さを見せるエピソードが
何編かあるのが長所ですね~。
子どもを守る大人がちゃんといるのも良い。
背景や小物の描きこみが美しく
冥府の家来であるガイコツたちや
生き物たちのユーモアあふれる作画も
魅力的なのでした~。
ケルベロス三匹モードがかわいい!
徐々にハデスとの恋愛色濃厚となっていくのですが
初期から他のギリシャ神話の神々と
主人公が交流を重ねているということもあり
(女神・ニンフの描き方がかなりよい!楽しい!!)
神と人の違いを乗り越えて一緒にいたい、を
選ぶまでに半分ほど巻数費やしているの好きですね。
甘めのいちゃいちゃはわりと読み飛ばす←
主人公がなぜ薬師になったのか、
今は日々の仕事に手いっぱいでも
将来はどんな薬師になりたいのか、
先達から学んだものを糧とするだけではなく、
直々の弟子をはじめとした次世代へつなげていくこと、を
ずっと描いてきたということもあり。
ハデスと相思相愛の夫婦となった後
ゼウスに神々の一員となるよう誘われるも
《人の生を全うする=死ぬことにした》という
読切で始まった作品のタイトルが
大きな決意になっていく流れは見事でした。
人としての生を終えた彼女に
再びゼウスが提案をするのは
主人公がそれまで積み上げてきたものを思えば
喜んで受け取れるごほうびなのでしょう。
そもそもコレットという名前は
神話のコレーが元ネタなのは明らかで
神々の一員となった彼女に夫であるハデスが
ペルセポネという名を与えるのは
予想していても良き着地なのでした。