完全版『白妖の娘』

 

木原敏江の作品、電子版全6巻。

 

正直な感想としましては

たしかに物語の終盤は駆け足気味と感じつつも

初期からの要素を大団円にまとめあげた傑作なので

テンポが間延びしている印象を受けるのですが。

 

「あと1巻増やして全5巻にしてほしい」

連載当時、編集長にお願いしていたという作者の

あとがきを見れば納得はするかな~。

 

作家が心残りになっている作品を

加筆修正できる機会はそうそうないので。

 

以下、感想です。

 

 

 

エピソードの合間に

演出が追加されている部分よりは

完全に知らないお話だ!!と

追加されている部分のほうが好印象でした。

 

でも正直なくても、本編は成り立っていた

(そこがベテラン作家の技ですね!)といいますか。

 

Aという人物がこのBという台詞を

発するに至るまでに色々あったに!

違いない!!の「色々」部分を

今回描いてくださったという理解で

正解なんでしょうね~。

 

その1カットでその気持ちは伝わっている!という

くだりが複数カットになっているのを

数年後に読むことで、私は「間延び」と

感じてしまうのであろう←

 

妖怪狐に立ち向かう、勇気を持った

日本犬・栗丸の名場面が増えているのは

喜んでいます!!

 

☆☆☆

 

《力を持たない女の子が、いわゆる魔のものと契約して

望みを叶えていく話》がドストライクでして。

(本当はそんな力を欲しなくて済む世界が健全、もセットで)

 

今作のトトキちゃんとお塚さまは

始まりは契約であっても

悪事を積み重ねていく中で自由に生きる楽しさを得て

(やはり社会や世界のほうがおかしいのだ!)

最後まで「悪女」「怪異」として

生きることを選択する、のが魅力抜群なのですよね~。

 

トトキちゃんが選択して

狐モードのお塚さまがすりよる場面

何度読んでも泣いてしまう……!!

 

元々のトトキちゃんが

《戦うひとではない》パターンではなく

信じるもののために立ち上がれる

強さを備えていた(発揮する場がなかった)

というのも大きいですけれどね~。

 

しかしトトキちゃんに限らず

昭和の大河ドラマのごとく

つくりの違うべっぴんさんが

主体的に魅力的にふるまう絵面は

見ていて楽しいものだ……

(悲劇の美女!もいますけれど)

 

一言でそのキャラクターを際立たせる、という

台詞回しが見事なので

老若男女問わず好きキャラが

ぞろぞろ登場するんだよな~。