『先生の白い嘘』

 

鳥飼茜の作品、全8巻。

 

萩尾望都『残酷な神が支配する』を

読むときみたいな心構えの必要な

作品だな〜と読み進めたら、2巻巻末にて

望都さんがコメント寄せてました(!)

 

以下、感想です。

 

 

 

ド直球性暴力表現がはっきり

描かれているという点を抜きにしても、

登場人物みんな不安定で何かしら欠けている

故に、「埋め合わせる」ための他人

(もっぱら異性)を求めているという、

信頼できない語り手オールスターという

状態なので、こちらも不安定な時は

触れるのをおすすめしない作品でした。

 

さいわい高校時は進学校に所属していたので

異性愛で埋め合わせるあの感覚を

ずっとよそごとのままでいられたのは

まあ平穏と言えるのだろうな(逆に大学でびっくらしたクチ)。

 

新妻くんが性被害を告白した際の

美鈴さんのふるまいは完全にアウトなので

あれを起点として惚れちゃうってマゾなのか!?と

逆に将来が心配になってしまうのですが

まあヒーロー担当なので仕方ないかな←

 

物語のエピローグは優しい味わいに

したかったんだろうという

作家の力業を窺わせるものでしたが

まあそのぐらいの救いはあってもいいですよね。

 

性欲の消化に、女性への暴力を必須とする

「パラフィリア」であることについては

訳ありなんだろうとの予想はついておりましたけれど

早藤が浮気相手の目の前で泣き出したり

自殺未遂の現場に遭遇した正妻に啖呵切られたりと

おまえ……生き地獄に落ちて当然なのに

「守られて」いておめでたいですね〜!!!!と

逆にこっちが呪いたくなってしまいましたよ。

 

被害を受けたことを「事実」にしたくない、

かわいそうな人だと「周知」にしたくない、といった

心理は丁寧に描かれていたとは思うのですが

全体的に男性に甘いなと思わせてしまうのは

完結済みの作品だからかな。

 

☆☆☆

 

映画はもう一切触れなくてよい判定なのですけれど

作者さんと主演の役者さんの間には

良い関係が築かれていたようなのが

救いなんでしょうか……

 

少なくとも、早藤の気持ちが

分かるなどと口を滑らせてしまう

監督が柱になって再構築するタイプの

作品ではなかったですね〜。