『クボ 二本の弦の秘密』

 

ライカの作品、2016年公開。

 

ひとまず字幕版を鑑賞。

あとで吹替版も見ておこうっと。

 

『ミッシング・リンク』の上映期間が

あっという間に終わってしまったので

そちらもいずれは見たいかな。

 

私の好きな日本作品群を同じく好きな人々が

楽しんで作ったアニメーションという印象です。

作り手に見えないものは創れないんだよなあ……

 

制作陣、ジブリが好きということは

聞いておりましたけど

東映動画時代(特にホルス)から好きでしょ……

となる場面が目白押しですね。

 

以下、感想です。

 

 

 

主人公の語りに始まり、語りで終わる

宿命を背負った少年の一大冒険絵巻。

 

冒頭の海のシーン、すばらしかったですね〜。

この物語は壮大なおとぎ話なんですよ、と

タイトルが出る前に紹介してるのすごく好き。

 

主人公が三味線の音色で折り紙を操る

「魔法使い」さんなので

見終わると折り紙を探してしまいますね。

 

生まれ落ちた日より祖父とおばに狙われ

父は殺され、母は日に日に魂があちら側寄りとなり

ついには宿敵と相まみえ、母を置き去りにし

生き残るために、三種の武具(魔法の神器)を

探す旅を始める……

 

正直、旅立つまでの段階で

主人公クボくんの環境ハードすぎんだろう!!

とは思ったのですが。

 

おそらく乱世の時代設定や主人公の生い立ち

さらにキャラデザの方が白土三平好きなら

仕方あるまい……という謎の説得力←

いやだってあちらはもっとハードだったしね。

 

おばあちゃんと一緒にいる時もそうでしたけど

おつきの人(?)たちが登場してからは

年相応の少年らしさが見られて

こちらもほっとするのでした。

保護者がいてくれるって大切ですね。

 

最後の戦いの勝利の描き方は

おそらく観客の好みが分かれる

ところではありましょうが、私は大好きです!!

 

天上の血と地上の血を併せ持った主人公から

視力を奪うことが、なぜ天上に迎える条件となるのか。

(五感全てにまで踏み込まなかったのはちょっと惜しい)

(実現したら「動画」で見られる作品にならないのでやめて正解)

 

弱き時代には与えられ、いずれ与える側となり

つないでいくあらゆるもの=「物語」たちが

いずれ死にゆく人間たちの最大の武器であり

三種の武具では全く敵わなかった天上の長たる

月の帝を倒す武器でもあったのだと。

 

村でのお盆のお祭りが

惨劇の日となってしまいましたが

その日だったことも、また巡り合わせ

だったのでしょうね……

 

以下、キャラクターの感想です。

作中でさらっと流された部分がドツボであった。

 

 

★クボ

切れ長の目の力が印象的な「美少年」が

ここまで造形できるとはなあ……と

びっくりなキャラデザ。国内でも今厳しいからな。

 

愛する母の「介護」が日々の営みの中心にあり

見ているこっちにはきつかった……ので

おばあちゃんと語らう姿

村人たちに物語を語る姿

さらにはこちら側に帰ってきた母親と

語らう姿が全てかわいらしかったです。

 

母も父も去ってしまったとはいえ

今後は村の一員として生きていくのでしょうから

あのまま順当に育ってくれると

将来有望な美青年になりますよね……

ちょっと楽しみです。

 

 

★母上/サル

作中では弱ってしまった姿ばかり

描かれておりましたが、後述のキャラにとって

最強の長女だったのではなかろうか?

 

「サルおばさん」になってからの

パワーボイスぶりにびっくりしましたが

あれが本来のお声なんだろうなあ……

見返すと愛する息子の「世話」をできるようになって

ちょっとわくわくしている感がありますね。

 

息子を旅立たせる場面にて

ヒルダを思い出してしまいました。

「悪魔の娘」ではありますけれどね。

 

 

★父上/カブトムシ

ちょっとだけおばあちゃんが担当してくれていた

作中における「ユーモア」「コメディ」部分を

一気に引き受けてくれたキャラ。

そういう意味でも救世主ですね!

 

サル=母上が確定した時点で

じゃあカブトムシ=父上ですよね、という

分かりやすさは好ましいです。

 

人間だった頃のキャラデザが

黒澤映画の、優しいほうの三船さんっぽいな……

と思っていたら、実際寄せていたらしい。

 

 

★おばさまたち

月の帝が支配する天上の人たちの話は

さらっと流されてしまうのですが

かぐや姫やワルキューレあたりの題材を

組み合わせた感じなのかしら。

 

おそらく最強三姉妹として地上の人間共を

ばっさばっさと殺しまくっていたのであろう……

そっちはそっちで見てみたい。燃える。

 

美しく輝いていた愛する最強の姉が

彼女たちにとっては「つまらない」存在である

人間に堕ちた結果芽生えた、憎悪の発露が

ええなあ、と思ってしまいます。

 

クボの父上に対する復讐=畜生に変化させるとかも

歪んでていいですよね、という感想になる。

 

鎖がま使いと二刀流というあたりが

日本の時代劇好きな人の仕業ですね!と

思ったりします、はい。

 

 

★月の帝

初登場時の衣装のテイストからして

多分黒幕さんだろう、と思っていたら

そうだった人。わかりやすいの大事!

 

そこまでちゃんと「日本の着物」描写を

描いてくれていたからわかったのですがね。

ありがたいですね。

 

最後のお魚の化け物デザインは

ジャファーのコブラとホルスのお化けカマスの

ハイブリッドだろうか……と思わせる

よき演出ぞろいで楽しかったです。

 

おばあちゃんと一緒にクボを愛する

穏やかな日々を過ごしてくれたら

ちょっと救いになるのではなかろうか。