水木しげるの作品、新装完全版全1巻。
南方戦線でのお話を、色々な語り口で
繰り返し伝えてきた作者ですが
こちらは「全滅」を描いた内容です。
以下、感想です。
何度も見開きで描かれる、美しい土地で起きた
地獄絵図の迫力よ!印刷技術が作品に
全然追いつかない作家のひとりですよね~。
あれ?地名が違うような??あたりは
巻末の解説で説明されておりますが
作者の祈りの発露なのでしょうね……
戦地では人の命は軽んじられるのが当然で
いつの間にか「いなくなっている」兵士も
怖いのですけれど、まだ生きている兵士を
連れて逃げられないから《遺骨を作る》ために
指を切り落とす場面なども、いつもの水木絵で
「強調」することなくさらっと描写されるのでした。
勝つためにまっとうな戦術を主張する上官もいるが
そういう人は早死にしてしまい←
兵士をかっこよく殺すことばかり考えている上層部が
(そうとしか表現しようがない)「自発的に」
再・玉砕を促すくだりは、昔話では済ませられませんね。
水木しげるの構想ノートは読みごたえ抜群で
関係者の証言なども収録されている
よい本なのでした。彼らを「英霊」などと呼び
賛美するのは、個人としての生への侮辱であろう。