『カムイ伝全集』第一部第14巻

 

ラストスパートですよ~!!

 

ここで希望が見えたかと思えば

急転直下となるのですよね……

 

以下、感想です。

 

 

 

第14巻「号びの巻」

★第1章「カンダチ」

浪人たちも刀を折り、百姓として

日置藩の土地に根付こうとしている、

いいことなのだが……

 

カンダチ=雷雨を伴った突風で

ありますが、嵐の過ぎ去った土地を

慣らそうとする元浪人たちの前に

過去が追い付いてきてしまうのだ。

 

立合をなかったことにしてくれた

百姓たちは「日置陰組玉手五十人衆」と

名乗ったので、苔丸たちであろう!

 

イタミ屋に火付けの指示を出した

竜之進であるが、町人には町人の

したたかさがあると笑う、悪人たちは強い。

あいつらを消し去るのは難題である。

 

アテナさんの墓を訪れる竜之進、

百姓たちもお供え物をたずさえるのであるが

すでに溝は深くなっているのだった……

 

嵐にも知恵と力で果敢に立ち向かう

百姓たちであるが、やがて訪れる

不穏を隠すためともいえるのだ。

 

新代官を切り捨てる竜之進であるが

それは罠であり、今までの地位に

とどまってはいられないと悟るも

命がけで逆らうのが、去っていった者たちへ

彼の誠意なのだろう。

 

竜之進が牢にぶちこまれたと知り

村の有力者たちは談義を重ねますが

望月藩の一揆首謀者の情報を得た

権力者たちはみさかいなく疑いをかけるので

小六さんまで拷問される始末である……

 

さすがに横目の頭も、失策とみなしますが

怪しい人物がぞくぞく集合しているのでした。

 

 

★第2章「嵐」

新代官には人別帳が渡っており

非人たちはみな元の生活に

戻らされるのであった……

 

新代官はイタミ屋と結託しており

正助たちの市の申請は通るものの

嫌な予感しかしないのである。

 

イタミ屋の根回しにより、すべての綿が

安価で買いたたかれてしまうが

協力者であるはずの他の商人たちの

顔色が悪いのも不思議な話で、

すかさず作者の解説が入るのだった。

 

新代官の年貢の取り立ては

苛烈を極め(それが「普通」でも)

竜之進の後任、という落差は

百姓たちに絶望を招くには十分なのだ。

 

村請新田開発に許可が出る一方

町人請負も同時に進められ

年貢負担が増すのは確定となり、

日置城には望月藩兵が駐留することとなる。

 

椋鳥の大群の渡りの季節が

描写されることにより

長い長い冬がやってくると

まざまざと見せつけられるのでした。

 

 

★第3章「第三の領主」

アテナさんを失った右近は

大自然の中に命をゆだねるも

「卑怯な男のこころみ」

自然は許さぬ、と語る作者の

力強さよ!そして山丈さんもかっこいい。

 

消えた一揆の首謀者を追う

横目たちですが、苔丸も

姿を消しているようで……?

とは気になるお話ですね。

 

百姓女たちが列を成し、

どこへ向かうのか?を

つける横目たちですが

これはおとりだったのだ!

 

カムイはどうしているのか……と

鉱泉につかり考える横目ですが

たしかにどこにいったんだろう??

 

イタミ屋が廻船問屋に手をまわしたという

仕組みを知り、対策を他の商人たちと

共有済みの正助は頼りになりますが

廻船=夢屋が出てきそうで、読者は

嫌な予感がしているのだ……

 

密談が終わり、イタミ屋の知恵は

どこから来ているのかと皆が不思議がる中

背後には夢屋がいると教えてくれるのは

番頭の市こと忍びの赤目である!と

彼は正体を明かすのであった。

 

皆が最後の手段を思い浮かべるところで

忍術で去っていく赤目はかっこいいですね~。

己の過ちに気づけばすぐに正そうとする、

この人の生き方は見事であるよ。

 

欲深い権力者たちの描写が続きますが

闘犬も刀剣も彼らにとって

「道具」なのだな、という

突き放しが逆に気持ち良いのである。

 

代官の巡察がのどかに行われる中

馬や犬にいたずらをしかけるのは

苔丸であろう……さてどうつながっていくのか。

 

 

★第4章「号び〔一〕」

大規模な土地見分が始まるも

共鳴りのスズメ落としにより

「妨害」され、権力者たちは

苛立ちを隠さないのであった。

 

そして庄屋の元へ、苔丸率いる

百姓たちが倉米の打ちこわしを

行うのは、鮮やかである!

 

代官たちが見分に向かう中

正助たちが名を伏せて

百姓たちの要求を突きつけるの

全面対決は避けられない空気が

どんどん増していくのだ……

 

権力者たちも一枚岩ではなく

ついには望月藩の侍たちも

動員される中で見分が開始され、

百姓たちも立ち上がるのであった。

 

すでに根回しは完了しており

各地で戦いが開始される中

山丈は「カムイ」と称賛の

言葉を贈るのである……

見開き画面の迫力よ!!

 

 

★第5章「号び〔二〕」

百姓と侍の全面戦争が始まり

農民には農民の戦い方がある!

という迫力戦術が繰り広げられますが

つらい……近代戦争のいいところって

兵器としての動物搾取が減ったこと

ぐらいかもしれんね(なくなってはいない!)

 

領内全土で起きた一揆の力はすさまじく

ついに町人請負での新田開発を

中止に追い込むも、まだこれからと

語る正助の言葉は重い。

 

新代官は竜之進の牢屋を訪れ

目の前で切腹しようとするも

己の目で見届けよと邪魔する忍びは

赤目である(カムイはいずこに?)

 

締めのカットが夢屋であることと

作者の語りが重い……そして

最終巻へとなだれこむのであった!